晴れない空の降らない雨

ハリー・ポッターと炎のゴブレットの晴れない空の降らない雨のレビュー・感想・評価

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 もしかしてマクシーム校長、リータを食っちゃった? 原作だと、ハグリッドとマクシームの逢瀬をコガネムシに変身して盗み聞きしてゴシップ記事を書くのだが、映画にはマクシームがハグリッドのヒゲから何かをつまんで食うという謎の仕草がある(半巨人だからといって、そんな真似はせんだろうに)。この後リータ出てこないし……。
 
 映画に関しては予想どおり苦しい。原作(翻訳書)は巻を追うごとにページ数が増えており、ここから上下巻になった。どう頑張っても1本に収まらないわけで、サイドストーリーがばっさり切られているだけでなく、メインの部分も経緯がすっかり簡略化されている。そのせいで映画しか観ていない人にとって、ほとんどのサブキャラは覚える価値のない存在になってしまっただろう。
 とくに完全に抹消された屋敷しもべ妖精は、作品のメッセージ性を伝える上でも重要な存在だったのだが(魔法使いの半ヒト種族差別がこの頃から強調されるようになる。狼人間、しもべ妖精、巨人、ケンタウロスなど)。
 それとヴォルデモートとハリーの対決で何が起きたのかが説明されなかったので、おそらくその後もバトル関係の理屈は省略されると思われる(正直ややこしいから仕方ない)。
 
 その反面、クライマックスでは原作より盛り上げる方向で改変している箇所もある。第1のドラゴン戦がそれで、前半の見せ場だけあって長尺を取っている。原作では、あくまでドラゴンは鎖でつながれた範囲から出られない(現実的にはそうだろう)。
 ダンスパーティもなかなかにゴージャスだったが、あのダサいロックバンドはどうにかならなかったのか。あと原作のハーマイオニーは泣かない。続刊以降のロンハーの痴話喧嘩はさらに面白いけど、果たして映画で再現してくれるのだろうか。全体的に青春映画くささがあるが、そのノリと全編通して暗~い画面がマッチしておらず、雰囲気が明るいんだか暗いんだかどっちつかずに。正直映画としてはキュアロンの3作目から後退して、元のハリポタ映画に戻ってしまった感はある。しかし、原作世界の映像化という点ではこれまで通り素晴らしく、(自分の中でイメージを構築できている人は別だが)原作既読者もそれを目的に観る価値はあるだろう。