ねむ

ジェヴォーダンの獣 ディレクターズ・カットのねむのレビュー・感想・評価

4.2
革命前、貴族支配の終わりが近づくフランスで、実際に起きた「ジェヴォーダンの獣」事件を脚色した作品。実際の事件は未解決だけど、この映画ではそれなりにちゃんと解決するので安心。

レンタルビデオの全盛期に観たものの、今は配信にもほとんど出ておらず、何となく幻の作品になりつつあるのか…というところで、まさかの4Kディレクターズカット!ということで、割と無理して映画館に行った。

フランス映画らしくキラキラ耽美な衣装と美術 × 漫画のようにはっきりしたキャラクターたち × スローモーションやカンフー、ゲームみたいな「必殺武器」を取り入れたスタイリッシュなアクション × ダークな残虐要素、とさまざまな魅力がごった煮。当時流行っていたさまざまな一世風靡映画の影響も感じる。監督の趣味をこれでもかと詰め込んだ感。

中盤あたりで一回、ここで終わるのか?と思うけど、その後がまた延々と続くなど、ペース配分微妙じゃない?と思うところもある。主人公のバディであるマニは今見れば完全に「マジカルインディアン」だし、娼館のお色気描写も「今なら」要らないようにも感じる。

しかし、ところどころにテンション上がりすぎる名シーンが挟み込まれるため、いわゆる500億点の加点になってしまうのがカルト映画たるゆえん…。
前半は主人公以上に目立ってしまってるマーク・ダカスコスの美しくもキレキレのかっこよさや、ヴァンサン・カッセルにしか出せないだろう病的で冷たい魅力、モニカ・ベルッチ様の圧倒的肉体(文字通り、肉体のすべてが美しい)の説得力…。浦沢直樹の漫画みたいな人好きのする主人公が、あるきっかけで豹変して真の力を解放…するところは悲しくもちょっと笑えてしまった。赤いローブを脱ぎ捨てるカッセル様の雄姿は、(この展開を忘れていたため)思わず声出そうになった 笑。

歴史上のミステリーに、一応のしっかりした解答が出るので鑑賞後もすっきり。この監督はレア・セドゥ版「美女と野獣」も監督してて、野獣役でカッセルを起用してるけど、このキラキラ感は受け継がれてて納得だった。「サイレントヒル」ではホラー方向に振り切ってたってことですね。
ねむ

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