黄推しバナナ

スーパーの女の黄推しバナナのレビュー・感想・評価

スーパーの女(1996年製作の映画)
5.0
脚本・監督 : 伊丹十三の○○の女シリーズ作品。

第一部 : 全く予備知識を入れずに鑑賞
第二部 : レビュー記入の為、再鑑賞

二部構成でお送りします。

【第一部】
最初に見た時はまだ学生で社会の「し」も分かってないクソ若造で、伊丹十三監督の偉大さも、構成力も、技術力も、全く分かってなかった。

まぁいわゆる「アホ」ですね。

この頃の見た感想は「少年ジャンプ」みたいな感じで面白いでした。

「キン肉マン」や「ダイの大冒険」みたいに、主人公の井上花子の弊害(敵)になるキャラ達(特に精肉部・鮮魚部などなど)が少しずつ仲間になって行き、ラスボス(安売り大魔王)を倒す過程が面白かった。

ただそれだけの感想だった。
この頃の「スコア 3.0」。

ねぇ「アホ」でしょ!

【第二部】
食の安全や食品偽装といったテーマを、社会が認識していない時点でこれをやったという先見の目。ただただ脱帽でしかない。
まだ日本経済にスタミナのある頃(バブルが崩壊したといえ、まだ今の2021年の状況より体力があった)、このままでは日本経済ヤバくなってくるよ!
今ならまだ間に合うよ!
染み付いたその考え直すなら今だよ!
体力が無くなってから気付いてももう遅いよ!
まるで2021年を意識して作っているかのような叱咤激励的な作りになっていると思う。
安全、偽装、改ざん、は他のジャンルでも当てはまる。あえて「スーパー」にしているが「セリフ」で丁寧に見ているこちら側に訴えてくる。
※好きなセリフ「100円のものを50円で売ってるなら安いって言えるけど、この店は30円のものを50円で売ってるだけだよ。」実に考え深い。

「ゴミが店内に落ちている」から始まり、「パートのおばさんの白衣が汚れてる」「商品の顔が前を向いていない」「色が変色してる」「魚から赤いお汁が出てる」などなど上げるときりがない、膨大なリサーチと膨大な資料から絞り出したストーリーが映像から染み出て来る。普通の作品と比べて何十倍もの量があるんだろうなと思わせてしまう説得力がある。
画面いっぱいの情報量。
画面に映る人や小物。
「後ろのエキストラのおばさん何かしてる」「前のおじさん何か見てる」「横のおばさん…」みたいな、もしかして画面に映っている人それぞれの物語があるかの様に見せる監督は日本ではあまりお目にかかれない。
強いて言えばアニメ監督だが「宮崎駿」かな。
隅々まで全く手を抜いていない。圧巻だよね。

改善した「正直屋」は従業員の事を「コスト」だと思っていない。それに比べて「安売り大魔王」は従業員の事をコストだと思っている。まるで捨て駒だ!

小泉内閣が打ち出した労働者派遣法改正(2003年3月)。2021年現在、構造改革は破綻し社会と国民にもたらした貧困と格差は立て直せなくなる程のダメージを日本に与えた。「安売り大魔王」的な事をやったツケは大きい。

映像の技術(場面展開、セリフに合う画の撮り方、引き寄りのカメラワーク、カット割り、陰影などなど)が素晴らしく感動。何らかの効果を得る為に意図的に取り入れている。例えば、何か重要な問題が発生する時ブラインドの影が顔に掛かったり、壁に映ったりする。
もはや教科書ですよ。
最近の映画はどうなの!って思ってしまう。何か最近の映画は「習ったから、教えてもらったから、こう撮るんでしょ」的な作品が多い。情けない。

「お前んとこの売り場にはこの主婦を興奮させるドラマが無い」
「良い売り場は主婦に対して話しかけてくるのよ」
「奥さん今日の晩御飯はこれにしましょうよってね」
この作品は男女の恋愛を描いているのかも。男性が「スーパー」かな。
お金があれば満足なんだろう的な「安売り大魔王」みたいな男性もいれば、女性心が分かってない「正直屋」みたいな押しの弱い男性もいる。

ラストに向けて「正直屋」が理想の方向性に向かっていく、それは「井上花子」の理想の男に「小林五郎」が近づいて行くと言う事で、正月商戦後に二人は結ばれて行くのではと言う伏線にもなる。

スーパーを立て直すサクセスストーリーでもある。
花子と五郎のラブストーリーでもある。
カーチェイスアクション映画の要素も有る娯楽作品でもある。
全体的にコメディ要素もある。
社会風刺的な作品でもある。

見る角度によって色々な表情を浮かべる、そんな偉大な作品である事は間違いない!

①鑑賞年齢20代(学生)
②心に余裕鑑賞あり
③思い出補正あり
④記憶明確
黄推しバナナ

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