結構面白かったですね。結構つまんなかったじゃなくて結構面白かったんだからまぁいいじゃないか、という感じではあるのだがぶっちゃけそれ以上は特に言うこともないような映画であった。まぁ悪くはないよっていう意味で面白くはあったのだが特に「ここが凄かった!」と熱っぽく語るような映画ではなかったなぁという感じですね。しかし映画の出来自体は、まぁこんなもんか、って感じなのだがどことなく期待外れ感を覚えてしまうのはこの『ザ・ウォッチャーズ』という映画が「あの奇才、M・ナイト・シャマランの娘の初監督作!」という風に宣伝されていたからだと思う。
シャマランの娘って言われたらやっぱ奇異な設定でどこかしらシュールギャグにも見えてしまうような展開をしながらもその実は鋭い社会批判を内包している、という強烈なシャマラン作品のイメージを引きずってしまって端的に言うとまぁ“変な映画”ってのを期待してしまっていたわけですよ。でもすでに書いてるように本作は割と普通にまとまったぼちぼちおもろい映画ってくらいのものだから、つまんなくはないんだけどちょっと肩透かしだったなみたいなとこはある。まぁ「あのシャマランの娘が監督デビュー!」って言った方が宣伝的には良いに決まってるから文句は言いませんけどね。
お話はペットショップでバイトしてる感じのアラサーくらいの女性(ダコタ・ファニング)が主人公で、彼女は仕事でインコだかオウムだかを客に届けるために車で日帰り旅行くらいの長めの配達に出るのだが、その途中にある森に迷い込んでえらいことになってしまうというお話です。なんかその森には異形の怪物がいるのだが、その怪物たちは人間観察が大好きらしくて森の中で捕まえた人間を大きなマジックミラー(家の内側からでなく外から見えるタイプ)付きの家に監禁してまるでリアリティショーを見るように彼らを観察しているんですよ。そんなところに捕まってしまった主人公は果たして無事に脱出できるのか!? というお話ですね。ペットショップ勤務の人間が一転、檻の中で観察される側の立場になるわけだ。
ジャンル的にはホラーとスリラーの合わせ技といったところだろうか。親父さんも得意なシチュエーションものの映画であるのだが、その見せ方は本当にオーソドックスなので特に言うようなことは何もない。ただ特筆することがあるとすれば、まぁこれもいつものことではあるのだが映画の冒頭が終わって主人公が森に迷い込み同じ境遇の人たちとあった会った辺りで、怪物が見物してる見世物小屋的な森の中ハウスではいくつかのルールがあるのだと説明されるのだがその辺完全に寝てましたね。ハッキリ言ってそこ寝てたら台無しなのでは…と思わなくもないのだが、本作は散々書いているように普通によく出来た映画なので要所要所で復習的な感じでルールの再説明とかしてくれるから睡眠鑑賞者にも優しい作りでしたね。
ていうかなんだろうな、割と無駄を省いてテンポよくぽんぽんと進んでいくような作劇だったから、ルールがある以上それに抵触しようとするシーンが当然あるわけで、その度に「○○するのはダメなはずだろ?」みたいなセリフが入るので寝ちゃった身としては非常にありがたかった。へー、日没までに森の中ハウスに帰らなきゃダメなんだ、とか家の中ではみんな揃ってなきゃダメなんだ、とか極々一般的な家庭内のルールを思わせる素朴な決まり事がうとうとしながらでも分かるのだった。
そう、ごく普通な家庭内のルールっぽい(多分)というのが結構重要な作品で、というのも主人公は幼い頃に親の言いつけを守らないようなルール無用の悪ガキだったのだがそれが遠因となって母親を死なせてしまったという過去があるんですね。それがトラウマとなってて姉妹とも上手くいっていなかった主人公が作中の森の中ハウスでの経験を経て…というドラマがあるわけである。これはちゃんとしたストーリーがあって素晴らしいという反面、またそのパターンかよというのもあるところである。なんかホラー映画(特に女性が主役のやつ)は家族間に問題を抱えててそれを作中の恐怖体験を経て乗り越えたり癒されたりする、というパターンのやつ多すぎでしょ。いやまぁ王道といえば王道なのかもしれんが、本作もまんまそんな感じだったので、まぁ悪くないけど…という一番最初の感想になるわけですよ。親父ならもっと変なもの見せてくれたと思うんだけどなぁ。
ただまぁ本作でも終盤にはどんでん返しというほどではないが意外な展開があって飽きない構成にはなっていた。ある人物の正体はちょっと予想外だったのでそこら辺は素直に楽しめたところでもある。ただまぁ繰り返しになるがそれが今までの展開を吹っ飛ばして今まで見えなかった物語の核心を浮き彫りにする…というほどに大きな驚きではなく、へーそうなんだー、くらいのものだからまぁぼちぼち面白かったよくらいに落ち着いてしまうのである。ネタバレになるから細部は伏せておくが、思ってたよりもずっとファンタジーだな! というのは面白いところではあったのだが…。
まぁそんな期待せずに観ればそんな期待してないなりに楽しめる映画ではあると思います。シャマランの娘とかそういう情報抜きにレンタルで5本くらい一緒に借りた中に入ってたら、思わぬ拾い物やんけ! てなるくらいには面白いと思いますね。ちなみに終盤明らかになる本作の設定はなんかやたら壮大になっていって面白いのだが、続編作りやすそうでいいなと思いましたよ。原作がどうなのかは知らんが続編が出るとどんどん安っぽくなっていくタイプのお話しだと思う。むしろ俺はそっちを観たいという気もしたが…。
まぁそこそこには面白かったです。