まぁまぁ面白かったのだが、あくまでも“まぁまぁ”でありめちゃ面白かったではないなぁ~という『動物界』でした。面白いにも色々あるわけですが、そこそこ面白いくらいでしたね、俺的には。
でも多分この『動物界』という映画はどういう作品なのかを期待して観るかでかなり印象が変わるんじゃないかなぁ~、という映画で、個人的には予告の雰囲気から察してはいたのだがやはりアニマル人間パニックムービーとかではなくガッツリ社会派な映画だった。ここは割と映画を観る前の期待度が分かれるところで、アニマル人間が大暴れするようなB~C級映画を期待して観に行ったら肩透かしもいいところであろう。本作は中々に真面目な寓意たっぷりな映画なんですよ。邦題である『動物界』ってのはなんとなくバカ映画っぽい感じがするのに!!
お話は、何か知らんが人間が動物化するという奇病が流行っている世界が舞台でどうやら父と息子の二人暮らしをしている主人公一家の母親もその奇病で入院しているらしいというところから始まる。その基本設定からストーリーが大きく予想外な方向に展開することはなく、まぁあるあるな感じで主人公の少年も徐々に動物化の奇病に侵されていって…さてどうなるかというお話ですよ。
これがB級映画なら動物人間に追い詰められて危機一髪な状況の主人公が、自らも動物化の力を得てそのピンチを突破し、なぜか主人公だけは動物化しても理性を失わずに家族や友人を助けるために奔走する…みたいな展開になりそうだが、上記したように本作はそういう面白おかしいパニックムービーの方向には行かずに人間が動物化するというネタはもっぱら寓話としての社会批評に使われるのである。というのも、この作品内に於ける動物化の奇病は原因不明で、それ故に周囲から偏見たっぷりな目で見られ患者は排斥される傾向があるのである。
これはまぁ、現代社会における移民とか難民、もしくはまだ記憶にも新しいコロナ禍中での感染者に対する村八分的な扱いを寓意として描いているのだろうということは容易に察せられる。社会から厄介者として蹴り出される人々ですよね。そこに主人公の少年の、親元から離れて自立する成長物語を正に動物的な欲求と折り合いを付けながら自身と向き合うというテイストで描かれるのである。ま、その辺の描写とか物語の展開の仕方は特にそつなく描かれるので、つまんなくはないどころかむしろ面白い映画だとは思うんですよ。思うけど、でもな~~、というところもある映画なのである。
なんていうかな~、こういう書き方をするとまるで俺がバカな人みたいに思われるかもしれないけど、人間が動物化するような設定があるならさぁ~、やっぱゴリラ人間大暴れ! みたいなシーンとかは観たいなって思うじゃないですか。いや、そういう映画じゃねーから! というのは分かっるけどさぁ、でも動物人間が派手に各々の動物の特性を活かしながらバトルしたり出し抜きあったりするところは観たいじゃん。でも本作はそういうの全然ないからね。そこはガッカリでしたよ。
カメレオン・キッズとかオクトパス・キッズとか、何となく出てくるだけで特に何もしないってのは残念だったなぁ。まぁそこは予算の都合とかもあるのだろうが、本作に於ける最大の残念部分でもあります。動物人間は全体的にデザイン良かったので余計にもっと観たかったというのはある。あとは人間が動物に変異するという異常な事象に対してのSF的な面白さもなくてそこも残念だったな。物語中に於ける動物化というのは、その寓意だけが重要視されて、なぜそんな現象が起こるのかというSF的なギミックの説明とかは一切なかったのが個人的にはイマイチでした。
まぁでも動物人間のことは無視して(『動物界』というタイトルの映画でそこ無視すんのかよ…とは思うが)少年の自我の形成と自立への第一歩を描いた映画としてはそこそこくらいには面白かった。親父との関係性の変化とかはそれなりにグッと来たりはしましたよ。鳥人間との交流もいいしね。
でも動物化云々の要素が如何にも取ってつけた感じで妙に説教臭く感じたので、動物化の奇病はオミットして単なる少年の成長物語にしてもいいんじゃね? とも思うが、それだとフックがなさすぎて興行として考えたときに映画の企画としてダメなんだろうな…。まぁ別につまんなくはないので動物人間が大暴れする派手さを求めなければいいんじゃないでしょうか。
まぁまぁ面白かったよ。でもゴリラ人間観たかったなぁ~~!!