ヨーク

グラディエーターII 英雄を呼ぶ声のヨークのレビュー・感想・評価

3.7
とりあえず結論としては面白かったな、という気持ちで劇場を出た『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』なのですが、言っておかねばならないこととしては前作『グラディエーター』は公開当時に観た記憶はあるのだが何分四半世紀前に一回観ただけの映画なのでその内容は正直全然覚えていなかったので、ぶっちゃけ続編モノとして観た場合にどうなんだろうなぁ…というところはある。特に復習とかせずに何となく時間が合ったからというだけで観たからね。そこは一応感想文を書いていく前に言っとかなくてはならないことではあろう。
いやだってさぁ、続編モノって難しいところがあるじゃないですか。特に本作なんかは24年ぶりの続編でしょ? 前作が公開された年に生まれた子供が24歳ですよ、あーた。それだけの時間を空けての続編となると監督自身の考え方はもちろん客の内面も生活もガラッと変わって、社会としての国際情勢とかテクノロジーも全然違う世界じゃないですか。そうなってくると前作と同じ気持ちで続編を受け止めるっていうのも難しいよなって話になってくる。そういう意味で長期間経って作られた続編モノってのは難しいし、そういう作品周辺のこと以外にも続編モノで難しいところとしては旧作ファンへのサービスと新規客への入りやすさをどうするかという部分もある。これもまた難しいところで、新規ファンが入りやすいように色々と刷新して新シリーズ開幕ということを強調しすぎると古参ファンは離れたりするし、かといってその逆に旧作のファンの方向ばかりを向いて前作を知っていないと分からないような内容にしてしまうと新規層からはそっぽを向かれて一気に閉じた作品となってしまう。これはねぇ、最近リメイク版の『ドラクエ3』をやっていた身としては難しいところだなぁ…と思っていたところなんですよ。
それでいくと本作はどっちかっつうと新規ファン向けに作られてるんじゃないかなとは思いましたね。というのも、上記したように前作の記憶など忘却の彼方であった俺が観て普通に面白かったので新規層には優しい作りになっているのではないかと思ったのである。ただここは上記したように難しいところで、前作をほぼ忘れていた俺がボケーっと観て面白かったということは強火の前作ファンにとっては(そうじゃねぇだろ!!)みたいな部分は結構あったのかもしれない。まぁそこら辺は俺にはよく分からないので何も言わないでおくが。
お話は正直前作もそうだったと思うのだがローマ時代の剣闘士を題材にした歴史アクションものという感じであります。おそらくローマ帝国(東西分裂する前の)後期の始まりくらいの時期でカラカラ帝統治の時代の終わりを描きながら主人公である剣闘士の貴種流離譚と周囲の人間の古き良きローマを求める物語となる。
不勉強で申し訳ないがローマ史に関してはすげぇ雑な知識しかないので、おそらくその辺は創作がかなり強かったのではないかと思う。ま、史実に照らし合わせればここからローマ帝国はどんどん斜陽になっていくので色々とフィクションで盛らねばいけなかったのであろうが…。でもその辺のフィクション的盛り方は良かったんじゃないかなと思いますよ。リドリー・スコットといえば俺の中では厭世家で人間嫌いで冷たく乾いた目で作品を撮る人というイメージなのだが、本作では大分人間への視点が暖かくてエンタメ路線全振りって感じで割り切ったのだろうなぁと思いましたね。普通に親子の情とか描かれてたからね。そこはリドスコ直近作の『ナポレオン』も人間嫌いな感は緩めの作品だったが、リドスコも丸くなったのかもしれないな。
それに加えておそらく(記憶がほぼないのでおそらくとしか言えない)前作よりもかなりアクションの派手さは盛られていたので、まぁ最初に書いたように普通に面白かったなという映画になっていたと思います。最序盤の攻城戦が一番良かったが、他にもサイとかサメとか出てくるとは思わなかったのでちょっとテンション上がっちゃったよ。
ま、そんな感じで絶賛てほどではないが面白かったですね。ただこれも繰り返し書いとくが、前作好きな人がどう受け止めたかは分からない。個人的には前作との繋がりを匂わせるような箇所はちょっとやっつけ感を感じたので、そこに期待した人はちょっとなぁ…となったとしてもおかしくはないと思う。あと、主人公よりもデンゼル・ワシントンが「イコライザーかよ!」って感じで活躍してたのも作りとしてはどうなのよと思わなくもないが…。
でもカラカラ帝がイメージ通りですごい良かったね。でもイメージ通りっても、それっていわゆるステレオタイプなカラカラ帝ってことだから、俺はローマ史に詳しくないからいいけど例えば三国志なら「また分かりやすい暗愚の劉禅かよ…」とか日本の戦国モノなら「また優柔不断な小早川秀秋かよ…」みたいなローマ物の作品が専門の人にとってはありきたりなカラカラ帝だ…というところはあったかもしれない。
しかしそれも含めてスタンダードな歴史アクションものとしては十分面白かったと思いますね。多くの人にオススメできる分かりやすい映画だったのではないでしょうか。そういう意味で面白かったですね。そういう映画なら別にリドスコじゃなくてもいいじゃん! という気はするけど!!
ヨーク

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