基本的に全作観ているが、そこまでコアなファンというわけでもないので怪盗グルーのシリーズとミニオンズシリーズでどれがどうだったかイマイチ記憶が定かではない部分があるのだが、確か前作か前々作くらいでグルーに実は生き別れの兄弟がいたという作品のときに内心、あ…これは中々のネタ切れ臭がするな…、と思ったものですが本作『怪盗グルーのミニオン超変身』も新しいことをやろうとしているのは分かるのだがイマイチ吹っ切れた感じにはならずに、まぁいつもの感じか…くらいの映画でありましたね。ただ、一応断っていくとつまんなかったということは全然なくてミニオンたちが画面内を所狭しと動き回っているだけで楽しいという本シリーズの核と言ってもいい部分は揺るぎないので面白いは面白い映画でしたよ。
お話は悪党として名を馳せた怪盗グルーも養子を迎えたばかりか結婚もして子供も生まれてすっかり落ち着き、あろうことか現在は反悪党同盟なる組織に所属しているところから始まる。まぁ凄腕ハッカーがその実力を買われて国家に雇われるみたいなことは現実にもあるらしいのでそういう感じでしょうかね。そんな何一つ不安のない完璧な人生を歩んでいたグルーだが、高校の同窓会でかつてのライバルに遭遇して彼はグルーの命を狙ってくるわけです。せっかく平穏な暮らしを手に入れたというのにこりゃたまらんということで、反悪党同盟によってグルー一家は新たな住居と新たな身分(もちろん名前も変わる)を手に入れて新天地へと引っ越すのだがそこにはグルーの過去を知るお隣さんがいてかつてのライバルもしつこくグルーを追い回してくる…という感じですね。
まぁこのストーリー自体はいいんじゃないのって思うんですよ。要は過去と決別して新しい人生を歩もうとするけどかつてのライバル然り、グルーの過去を知る隣人然り、悪党をやっていた過去の自分の行いが現在に影を落としてくるというパターンのお話ですよね。もちろんこれはハチャメチャなギャグと共にミニオンズが大暴れする怪盗グルーシリーズなのでシリアスなストーリー展開などは皆無に等しいが、テーマ自体は興味深いものである。重く取れば人は過去の過ちを精算できるのだろうかという罪と罰的な物語と受け取ることもできよう。
ただ何つうかね、基本ちびっ子向けの映画だということはもちろん、ランタイムも95分と短めな割には登場人物が多くてわちゃわちゃ感は楽しいのだがいかんせん一本のストーリーとしてはとてもまとまりがいいとは言える出来ではなかったんですよね。大体いつもそんなもんじゃんと言えばそれはそうなのだが、しかし一作目はグルーにミニオンズにその後養子になるちびっ子たち(と山ちゃん演じる敵役)くらいしかいなかったので各登場人物のドラマもしっかり描かれていたのだが、これは続編ものの宿命でもあるが次作では後に奥さんになるルーシーと生き別れの兄弟が出てきてさらに登場人物一人一人に対するドラマパートの尺は短くなってしまう。本作ではさらにそこにグルーJr.も加わる上に悪党に憧れるお隣さんまで出てくるし、マンネリ化しないための新要素としてのメガミニオンたちまで出てくるというのだからドラマパートなどというものはペラッペラの薄さになるのも当然というものですよ。生き別れの兄弟は最後に顔見せ程度で出てくるだけだが、それにしたって主要登場人物のドラマなんて描いてる暇がないってな感じでひたすらギャグとアクションだけが続くのである。
まぁそれでも面白かったから別にいいんだけどさ、お馴染みのキャラがちょこっと出てくるような断片的なシーンを繋ぎながら特に深く描かれるわけでもない因縁を軸に物語を展開するってのもそろそろ限界かなぁと思うところもありました。ミニオンズシリーズを除いても本作で4本目だからね。そりゃまぁマンネリはするよなってところなんですけど。目玉みたいに宣伝してたメガミニオンの出番が少ないのも残念で、そこはもうちょい観たかったというのもある。ここはタイトルにもある“超変身”の部分なんだからもうちょい観たかったですよ。そこも各登場人物の担当シーンを均等に分けていったらこうなりましたって感じでそもそもが詰め込みすぎなんだよっていう問題だと思うんですけどね。
でもギャグやアイデアたっぷりのアクションなんかはやっぱ最高に面白い。溶かしたチーズの上をスキーで滑っていくシーンとかバカっぽさとワクワク感がどっちもあって最高。スーパーヒローみたいな超能力を手に入れたメガミニオンたちがその力をコントロールすることができずに振り回される様なんかはアメコミ映画への鋭い皮肉のようにも思えてしまう。あと個人的には「正しさ(敢えて括弧)」の名の元に不快に思う人もいそうだと思ったけど、髪をめちゃくちゃにされたおばさんが本当にかわいそうなだけだったのは笑った。ここ最高だったな。元々悪党が主役のお話ってこともあるのかもだが、イルミネーションのアニメはこういうところが好きですね。
まぁシリーズものとしては悪くないけど同じくらいにマンネリ感もある、という感じでしょうか。面白くはあったけどわざわざオススメするほどでもないかなぁってとこですね。ただその辺のマンネリ感は制作側も感じてるのかラストシーンに今までのキャラ総出演みたいなパートがあって、すわシリーズ最終作か? と思ったのだがどうなんでしょうね。いいネタが思いつかなかったらもうこれで終わりでもいいや、くらいの気持ちで完結編ぽい雰囲気を出したのかもしれないけど。
でも個人的にはがっつりとストーリーのある完結編を観たいなぁと思ってしまうが、それは俺が大人の客だからそう思うだけで、グルー及びミニオンズシリーズに綺麗かつ丁寧に畳んだ最終作なんて必要ないのかもしんないですけどね。ま、また新作があれば観ます。