好きと、才能。そして「なぜやり続けるのか?」
すごく良かった、短編小説を読んだ様な気持ちでした。
主人公の漫画に対する気持ちはどこから来るのかという主題で才能の種類を描きながらも、努力の後に現実に直面される。それでも「好き」を見つけて戻る。葛藤に悩まされる描写で早々にグッときてしまいました。
クリエイター向けの内容と感じられるんですが、凄く普遍的な内容だと感じました。「好きを仕事にする」内容の葛藤はありつつも「才能」「憧れ」「努力」「なぜやるのか」など皆んなが共感できる事が多いと感じられました。
現実の事件に対する表現では、注意がそこにいってしまい作品への没頭を減らしてしまい少しノイズと感じられましたが、作者の意図は強く作品の主題に関係しているので必然だったと思います。
〜〜〜 以降ネタバレあり 〜〜〜
ラストのパラレル的展開は、これも今作品の核の部分で、作品内に沢山出てくる映画のポスターなどから示唆されています。沢山の考察がされてそうで僕は自信はないですが…僕なりの感想としては
藤野の想いが見せた妄想?奇跡?なのかなと感じました。ドアの隙間から帰ってきた4コマ漫画が、どう見ても藤野が書いた様に感じられ(京本が真似したかもしれないが)進撃の巨人のラストにも似た救いの為の妄想?が主人公を前に進めるというのが熱くさせられました。
妄想の中では2人は出会わない展開の中でも、最終的に出会い、そして「漫画」に戻っていくという、本当に救いの展開。宿命とも言えるのかな?そして「なぜやるのか?」の再認識。
京アニ事件の被害者クリエイター達への鎮魂として、残された者たちが自分たちの「なぜやるのか?」をその被害者たちや、背景を描くスタッフ、沢山の映画や作品とその作家の人々、そして作品を受け取る読者などを、その「なぜやるのか?」の理由として、これからも書き続ける
と言う事をエンドロールでゆっくりと表現してたと感じられとても感動して観ていました。
短編らしくコンパクトに主題が凝縮られていてその中でも感情移入が出来る本当に良い作品でした。