にっきー

めまいのにっきーのレビュー・感想・評価

めまい(1958年製作の映画)
4.5
自分の中でヒッチコック作品ベストは何かというので、以前は『マーニー』、いや『泥棒成金』、でなくて『北北西に進路をとれ』を経て、作品群の中では異色な感じのするこの『めまい』かと思っていた時期がありまして。

この作品も何回も観ていますが、見飽きることなく、NHKBSでかかる度に見てしまうわけですが、それはヒッチコック監督作品に感じる色褪せない洗練さも一つの要因だと感じます。

最近、この作品に「純粋なる倒錯」とでも言ったらいいのか、例えばマデリン(ジュディ)のライバルはジュディでありマデリンに他ならないわけですが、そこに何とも言えないマデリンあるいはジュディの不在感を感じるに至ったのでした。越えるべきは自分自身、でも虚構の自分は越えるに越えられません。でも、この物語の被害者といいますか利用される側であり、加害者ともある意味言えるスコッティもジュディも純粋ですよね。純粋ゆえに利用され、しかし、ゆえに救いも同時に存在しているように今では感じます。

最終的にはスコッティは一つのヒントから夢から覚めたが如く、自分を取り戻し荒療治的にトラウマも乗り越えるわけですが、最後の何とも言えない自身の姿が、中盤の締めくくりの夢での落下した自身のシルエットに重なって、見事な余韻を与えます。

結局、自分の中でもヒッチコックベストは『バルカン超特急』だなと思うに至る2023年年末でありました。
にっきー

にっきー