グラビティボルト

美しき仕事 4Kレストア版のグラビティボルトのレビュー・感想・評価

美しき仕事 4Kレストア版(1999年製作の映画)
4.5
これは傑作。間違い無く傑作。
ジプチのガランとした砂漠、海岸で若きフランス外人部隊の訓練生が鍛え、踊る。
でも、彼らを教育するのがカラックス映画で女に執着しまくったドニ・ラヴァンであるからには、何も起こらない訳が無い。
躍動する肉体とは裏腹に鬱屈が蓄積する様を撮る。
激しい訓練のモンタージュが沢山あるんだけど、前のシーンの音声を残してショットを切り替えるから、ドニ・ラヴァンの感情だけが置いていかれるような不穏さがある。

クレール・ドニ版の「フルメタルジャケット」なのかな?とも感じた。
ただ、キューブリックと違って精神分析的にならず、あくまでも陽光に照らされる若き兵士の肉体の美しさと、どうしても訓練兵の1人に無根拠な憎悪を感じてしまうドニ・ラヴァンの葛藤の2つの要素に賭けてるのが良い。
なんといってもあのラストショット!
寸前で、憎しみ故に規律違反を冒して除隊となったドニ・ラヴァンに拳銃を握らせ、自殺か・・・と思わせた所にあの肉体&生命を肯定するような脈波のアップ!からのプロのダンサーも黙らせるような過激な舞踏!すげぇ!まさにアクション映画!

前半から繰り返される、クラブの女性ボーカルをフェンス越しに見守るショットと踊り狂うドニ・ラヴァンを見詰めるラストショットは多分共通する。
規律通りに動く兵士や、歌う女性を一方的に見る立場から、見られる立場へ。しかし、それを負の変化として決め付けない。