グラビティボルト

オッペンハイマーのグラビティボルトのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
1.3
ノーランのワースト。
題材云々以前に役者や場面をどうやって撮るのかわからなくなってしまった監督が、とにかく画面を「原爆」という題材にこじつけて白飛びさせ、大袈裟なサウンドトラックを掻き鳴らして走り抜ける180分。
いい場面の片鱗も無かった。

実際に街のセットを作り、爆弾も造形し、オッペンハイマーの幻視するエレメントも実物の光で撮った。ここまで作り込んだショットをズタズタに切り裂いていく編集に疑問しか抱け無かったし、
バカデカいサウンドトラックも正気とは思えないし、単純にうるさい。
どんなに長い映画を撮っても付き合ってくれる観客が味方なのに、どうして巧くもない躁的な編集で魅せてしまうのかわからなくて辛い。

混乱しまくった編集がある種の取っ付き辛さを強化して、それが映画の
壮大そうさや、凄そうさをプラスしてるんだけどそれがノーランに取って幸福なのか?とずっと悩みながら観ていた。

そもそも格闘アクションすらちゃんと撮れないノーランに、より細かい動作(つまりアクション!)が要求される学者の映画、審問会の映画を撮るのは無理なんだよね。
黒板に数式を羅列したり、書類を投げたり、新たな理論発見に昂る役者の動きが全てつまらん。
性急な編集のせいで場面が保たない典型。
トニー・スコットじゃないんだからこのズタズタの編集、語り口は無茶ですよ!と突っ込んであげるプロデューサー不在の「超大作」だ。

菅田将暉が定規を伸ばすだけで面白い「アルキメデスの大戦」や
マット・デイモンが目線を向けずに飛んできた書類をキャッチする
「レインメーカー」を10000回見直してから出直せ!と観ながら罵倒したかったが足をモゾモゾ組み換えながら堪えた。

エミリー・ブラントをただヒステリックな女にしか観えないように撮り、動かしているのもフェミニズム云々以前になってないと思う。