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幕末太陽傳のakrutmのレビュー・感想・評価

幕末太陽傳(1957年製作の映画)
3.6
品川宿の遊郭「相模屋」を舞台にした時代物の群像劇。落語の『居残り佐平次』を元にしたストーリーであり、無一文で豪遊した佐平次がその返済のために相模屋で働き出すが、どんな仕事も要領よく捌いてしまうので、皆んなに重宝されるというストーリー。日本映画史上の名作とされるほど評価が高く、川島雄三監督の代表作とされている。

ということで鑑賞してみたが、個人的にはそれほど評価される理由がよくわからなかった。確かに、フランキー堺の軽妙な演技は佐平次というキャラにマッチしているし、コメディタッチでテンポ良く進んでいく時代劇は、この当時は異色だったと思う。しかし、映画の冒頭で表示される「製作再開三周年記念映画」(1954年に自社映画の製作を再開してから3周年)ということを考えると、内容も出演者もちょっと物足りないかなあと、上映から63年後に初めて観た者は感じてしまう。当時の俳優の格はよくわからないが、主演がフランキー堺、左幸子、南田洋子というのは、記念映画としてはちょっと物足りないのではないだろうか。石原裕次郎も出演しているが、ほとんど彼の良さは出ていない。当時の日活を支えていた三橋達也、北原三枝、浅丘ルリ子なんていう面々も出演すると記念映画っぽくなった思うのだが。川島雄三監督と日活の微妙な関係とかもあったのかもしれない。ペーペーの若衆を演じている岡田真澄の頼りなさは笑えたが。

でも、川島雄三監督に見出されてこの世界に入った芦川いづみが、ちょい役ではあるがちゃんと出演していたのは嬉しい限りである。黙々と料理をよそうだけの姿でも絵になる。そんな可愛いいづみちゃんを、女郎に売り飛ばすな!
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