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All We Imagine as Light(原題)のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

All We Imagine as Light(原題)(2024年製作の映画)
4.5
[ムンバイの空気に苦しめられる三人の女性の物語] 90点

大傑作。2024年カンヌ映画祭コンペ部門選出作品。パヤル・カパーディヤー長編二作目。インド映画としてカンヌ映画祭のコンペ部門に選出されたのは1994年のシャージ・N・カルン『私自身のもの』(YIDFFにて上映)以来実に30年ぶりとなる。舞台は現代のムンバイで、冒頭ではムンバイの夜景を背景に様々な人がムンバイについて語る言葉が重ねられる。"23年もここにいるのにホームとは呼べない"とか"どの家族にも誰かしらムンバイに住む構成員がいる"とか。そこから物語はムンバイにある小さな病院に勤める面倒見の良いプラバと若きアヌという二人の看護師へと視点を移す。プラバには新婚直後にドイツへ出稼ぎに出たままほとんど連絡も取らない/取れない夫がいるため、同じ病院のマノジ先生に言い寄られても前に進めず、ヒンドゥー教徒のアヌにはイスラム教徒の恋人シアズがいた。新たな恋を始めるべきでないと変化を恐れるプラバと、周囲の目を気にしてシアズとの関係を大きく進められないことにやきもきするアヌは共同生活している以上に多くの共通点がある。二人とも、或いは登場人物たち全員が間接的にムンバイという土地の空気に圧迫感を覚えているというのが興味深い。プラバとアヌは周囲の視線を気にしていて、プラバが助ける年上のパーバティという女性は再開発のために長年住んだ家から立退きを要請されていて、ヒンディ語を覚えられないマノジ先生もムンバイに馴染み切ることはない。彼女たちは拭えない孤独を抱えているのだ。しかし、そんな重苦しい題材に反して、映画の歩調は実に軽やかで、三人の悩みに寄り添って一緒に悩んでくれるような距離感で、支え合う柱として参加しているような感覚にすらなる。そして、映画は青みがかった柔らかな色彩と静かな光で二人を優しく包み込む。特にムンバイでは夜に印象的なシーンが多く、深夜に一人で起き出したプラバが差出人不明でドイツから届いた最新の炊飯器を抱きしめるシーンや、プラバとパーバティと共に再開発を謳う看板に石を投げるシーンなどどれも美しく彼女たちの感情を解き放つシーンである。そして、そんなプラバとアヌが田舎に帰るというパーバティの引越を手伝う形で田舎へ行く中盤から、二人は新たな光に満ち溢れた"ホーム"を得たかのように、自らを縛っていた鎖から解き放たれる。"運命からは逃れられないよ"と言っていたあのプラバが解き放たれた瞬間の美しさ、洞窟にデートで入ったアヌがシアズを振り返った瞬間の陽光の美しさに息を呑む。
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