アカデミー授賞式ギリギリ直前の鑑賞。
そもそも、この健全ロマコメ風のポスターを見た時点で、これが既にカンヌでパルムドール?と不思議に思っていたのだが、いざ鑑賞してみて納得。
ストリップダンサー、というかその後の個人プレーがメインみたいな夜の店で働く“アニー”ことアノーラが、ロシアからやってきた大富豪の御曹司(名前がイヴァン=イワンなのが笑える)と出会い恋仲になる序盤から、彼の親やその部下達が登場して罵倒のオンパレードになる中盤、その後の結末に向かう終盤の三部構成になっていて、中盤は「逆転のトライアングル」「スクエア 思いやりの聖域」等に代表される、ここ数年のカンヌの傾向になっている、修羅場や胸糞テイストを凝縮したアレである。これがアカデミー作品賞にノミネートされるのはなかなか凄い事だと思う。
こんなトンデモ映画を、業界最高賞レベルに押し上げているのは、間違いなく主演女優のマイキー・マディソンによる熱演だ。セックスシーンが異常に多いのでメジャーどころの出演は難しいはず。そこで抜擢された脇役クラスの彼女が、ここぞとばかりに強烈なパッションを発する。
これまでセックスワーカーやシングルマザー等、社会的に厳しい状況にいる女性を描き続けてきた監督ショーン・ベイカーにとっても勝負に出た力作だと思う。
皆さん仰っているけど、どこに向かうか分からない終盤からの、ラスト数秒が最高。アカデミーでも作品賞、主演女優賞辺りは取って欲しい。原題を貫いた日本の配給会社も、当たり前とは言え頑張った。このタイトルである事が凄く大事!