前作『ミンナノウタ』は村シリーズに比べたらそこそこ面白かったしちゃんと怖いシーンもあったので中々良かったよ、という感じの感想文を書いた覚えがあるのだがその続編となる本作『あのコはだぁれ？』はまぁひいき目に観てもダメでしたね。つまんなかったし怖くもなかった。まぁ近年の清水崇作品を念頭に入れておけば、まぁこんなもんか…、という感はあるのだがそれにしたって相当ハードルを下げて臨んだ上でちょっとこれは褒める気にはならんなという作品であった。
という感じでわりとボロクソな感想の出だしだけど映画の出来とは違う部分でちょっと興味深い箇所はあった。というのも本作『あのコはだぁれ？』は上でも書いたように『ミンナノウタ』の続編なのだが、これがなんというかストレートな続編ではなくて半分くらいは前作のおさらい的な総集編感があるんですよ。これは単なる俺の妄想というか邪推なので信憑性はかなり怪しいところだけど、個人的には『ミンナノウタ』の続編を作るぞとなったときにメイン級で出ていたEXILEの弟分的なダンスアイドルユニット(名前忘れた)のメンバーを出すことができない(スケジュールや出演料などの問題で)のでそのまま引き続くストレートな続編は作れなかったんじゃないかなと思ったんですよね。だって続編ものならよくあるような前作のあらすじ的な回想シーンすらほとんどなくて、あってもEXILEの弟分的な人たちが出てくるシーンは一切ないという不自然さだったんですよ。これは多分契約上とかの関係でEXILEの弟分的な人たちを出すことができなかったからある種のリブート的な感じで最初から作品の設定とかをめちゃくちゃ丁寧に説明しながら再構築したのではないだろうか。
その部分に関しては俺より先に観てた人がTwitterのTLで全く同じことを言ってたんだけど、この映画は“前作未見の人の方が楽しめる”という珍しい続編ものだったな、ということであり、映画自体は別に大して面白くはなかったがその点に於いて興味深い映画だなぁと思ったのでした。
お話は前作の呪いの根源だった女子生徒がかつて通っていた学校が舞台で、臨時で赴任してきた新しい教師である主人公が夏休みの夏期講習を担当するところから始まるのだが、このクラスには存在しないはずの生徒がいてその生徒に接触した者が不可解な死を遂げてしまう…その事件の背後には一体何が…といった感じのお話しです。存在しないはずの生徒というのがタイトルでもだぁれ？ と言われている“あのコ”なわけですが本作が初見の人ならともかく前作を観ている人間にとってはだぁれ？ じゃねぇよ！ アイツだろ！ 人が死ぬ時の音を集めてたサイコ野郎だろ！？ としかならないのだが、まぁその辺も本作が初見の人に配慮をしたのだろうと思われる。
タイトルも前回から大きく変えてきているし続編ものっていうのをあんまり前に出したくなかったんでしょうね。だって普通は続編ものってなったら前作観てない人は観に来ないもん。でも『ミンナノウタ』が思ってたよりヒットしたから同じ世界観でもう一本(できればさらに作ってシリーズ化も…)という思惑もあったから二本目からでもちゃんとついて行けるような作りの続編ものになったのだと思う。だから上記したように前作未見の人の方が楽しめるんじゃない？ っていう珍しいシリーズものになったわけですね。要は徹底的にマーケティングを優先して作られた映画というわけだ。それで大コケしたらだっせーな！ という感じだが、何と本作はすでに『ミンナノウタ』以上の興収を叩き出しているらしいので製作側の思惑が大当たりした作品というわけなのだ。
ま、ヒットしていることは大いに素晴らしいことなのだがしかし前作も観ている者にとってはやはり前半から中盤までは非常に冗長で面白くはなかったですね。あと思い出したように『呪怨』要素が出てくるのは前作もそうだったが、今回明らかになったこととしてちょっとしたファンサービス程度だと思っていたとっしーが予想以上にストーリーの核心にいたのでこれ思った以上に『呪怨』だな！ ってなったし、まだそれでやってくつもりなのかよ！ と内心呆れもした。これなら大して面白くはなかったけど新しいお話を作ろうとしてた村シリーズとか『忌怪島』の方がまだよかったよという気もしてしまう。
まぁでもティーン向けホラーとしてはこんなもんでいいのかもなぁ、とも思うのだが、それにしたって1ミリも怖くなかったのは如何なものだろうか。しかし土曜とはいえ8割くらい席埋まってたし、10代くらいの若い客が多かったからちゃんと狙い通りの層にはウケてんだろうとは思います。その辺の狙い通りのものを作れているという点は大したもんだが、でも小手先の総集編みたいな出来だったのは残念だな。階段首吊りはもういいって！
まぁ次回作(ヒットしてるらしいし多分あるだろ)はもう説明的な部分はなくなるだろうからちょっとだけ期待はしておきます。いやもう観なくていいだろ…という気もしてはいるのだが…！
