途中までやや冗長に感じたのだけどこの科白劇もまたファスビンダー作品における報われない虚しさに通底していることを知らされる。外連味も控えめで舞台の移動が多いにも関わらず、彼の室内劇の閉塞感と何ら変わらない。アフレコによりすべての科白がモノローグか朗読のように乖離し浮遊する。自然児と言われ快活で奔放だったが10代のうちに20歳上の男爵と結婚させられ出産し男爵の友人である少佐との密会(おそらくただ会っていただけ)はあったものの、結局「本当の」恋愛らしきものを実感できず、男性中心社会の循環や夫の地位や道徳的観念の虜となり、美しさと若さ以外に束の間でも何事かを成し得ることはまるで無かったエフィ・ブリースト。
横顔、横移動のアップがハンナ・シグラで多用され、彼女のつんと細く締まった鼻を堪能できる。あの独白だけのためにエフィ・ブリーストは生きていたように見える。