バーバラ・スタンウィックがめちゃくちゃ素晴らしかった。そして腹立たしい。讃えられ名を遺す男性の蔭でこうやって埋もれ犠牲となっていった女性が一体どれだけいるんだろう。ウィリアム・A・ウェルマンはほんとにいい。『女群西部へ!』といい『廃墟の群盗』といい、名もなき女性たちへの視点がある。
バーバラ・スタンウィックはジョエル・マクリー(凡百)の内助の功にもなれず、ただただ「結婚証明書」だけをよすがに百年生きてきた。結婚証明書大写しのむこうにマクリーとの間にできた双子の姿。その何とも可愛らしい双子はあっという間に姿を消す。
彼女が大切にしてきたのはマクリーではなく、マクリーを信じて行動してきたという彼女自身の誇りそのものだと、それを若い女性記者、次の百年の人に遺せた。女性記者は百歳のスタンウィックの頬にキスする。全編に渡り重要な局面を表してきたキス。結婚証明書を破り捨て、一人歩き出すスタンウィックのロングショットに泣いた。
そしてスタンウィックを無条件に支え続けたブライアン・ドンレヴィこそ、どこにも名を遺さなかった。