コーカサス

間違えられた男のコーカサスのレビュー・感想・評価

間違えられた男(1956年製作の映画)
3.7
“世の中には3人いる”

自分にそっくりの強盗犯と間違えられた男が体験する恐怖と悲劇を描いたヒッチコックの異色作。

ヒッチコック作で唯一実際にあった事件を元にしたサスペンス劇だが、本質は “冤罪” という最もあってはならない恐ろしい題材を鋭く抉った社会派ドラマでもある。

次第に衰弱していく真面目な男を演じたフォンダと、夫の逮捕で精神が崩壊していく妻を演じたマイルズ、ふたりの緊迫した芝居が素晴らしい。

また、独房に入ったマニーの首元に影が差し込み、あたかも絞首刑で苦しむかのようにキャメラを回転させる演出やマニーの映る鏡が真っ二つに割れるシーンといったヒッチコックならではの演出や映像も見事だ。
それでも回転する演出に関しては、トリュフォーがダメ出しをしているのも興味深いが…。

この世には自分に似た人が三人いるというが、もし自身が“間違えられた人”になってしまったら…そう考えると、どんなサスペンスやホラー映画よりも怖いことをあなたも私も知るだろう。

69 2021