emily

ぼくは怖くないのemilyのレビュー・感想・評価

ぼくは怖くない(2003年製作の映画)
4.5
1978年夏、イタリアのとある小さな村、10歳の少年ミケーレは廃屋の裏で大きな穴を見つける。その中には少年が鎖につながれている。水をあげたり、パンをもっていったりし、仲良くなり、その少年がフィリッポであることを知る。そこには大人達の秘密が隠されており、それを知ったフィリッポは・・・

冒頭からきらびやかな夏の太陽の下で、黄金色に輝く一面の麦畑、まぶしすぎて直視できないぐらい圧巻の風景美に囲まれて、また美しすぎる主人公が自転車でその中を走るだけで絵になる。
物語は少年の目線で描かれている。そうして終始ひろがる夏のまぶしさと広大な麦畑が、どこまでも無限に広がる未来を美しく彩っている。
子供たちには子供たちの世界があって、そこにも大人達と同じようにシビアな現実がある。仲間はずれにしたり、罰ゲームでつらい思いしたり。その中でもミケーレは正義感のある純粋に人を思える優しい少年なのだ。

田舎町の閉鎖的な空間には秘密があり、それに全員が加担している状態であることを会話から聞き取れるのだが、あくまでカメラは少年の目線で映し出す。ミケーレはその事実をしっかり把握できてはいないだろう。少年がただ純粋に行ったのは、フィリッポを助けること。友達を助けること。それは少年にとって当たり前のことで、そのためには怖いものなど何もないのだ。

結果としてそれが親たちも救うことになるという皮肉。シビアな現実を積み重ねることで、嘘や秘密を重ねていくのが大人になるということなのか。子供のころの純粋な気持ちはときに残酷な結果を引き起こす事もあるが、やはりその気持ちはいつまでも持ち続けたい。そうして大人になったらもっと楽しいことがあるんだよ。って思える自分でありたい。
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