こたつむり

THE 有頂天ホテルのこたつむりのレビュー・感想・評価

THE 有頂天ホテル(2005年製作の映画)
3.5
あるホテルの騒々しい大晦日の夜を描いた喜劇。
三谷幸喜監督作品。

個人的には大晦日が一年の中で一番好きです。子供の頃に「大晦日は夜更かしして良い」なんて言われたからか、何からも拘束されない印象が強いのですね。これが一夜明けて元旦になると“祭のあと”という感じで、あまり好きじゃなかったりします。

そして、本作ですが。
そんな大晦日の自由奔放の雰囲気を描いた作品としては。うん。極上の逸品と言えるでしょう。一つ一つの欠片は「さすが三谷監督のコメディは面白いなあ」と言えるものです。まあ、笑いのツボが合えば、ですけどね。あと、事前に大きな期待を抱かないのも大切ですね。

と言うのも。
本作が公開されたときの三谷幸喜監督は『ラヂオの時間』『みんなのいえ』と面白い作品を連発していて脂が乗っていましたから、かなり期待に満ちて本作に触れたのです…。でも、残念ながら、その期待に応えてくれなかったのです…(興行収入は良かったんですけどね)。

その理由は言わずもがな。
ひとつの大きな流れを作らなかったことです。いや、三谷監督としては想定内だったのでしょう。色々な場所でドタバタ劇があり、それを繋いでひとつの物語にする…うん。群像劇としては真っ当ですよね。でも、僕が求めていたのは…クライマックスでパズルのピースがはまるように一つの絵が出来上がることだったのです。

あと、テーマとテーマが噛み合っていなかった、と言うのも原因の一つかもしれません。“家族のようなホテル”と“自分の好きなように生きる”というテーマは…相性が悪かったと思うのです。どうせだったら、“大晦日の自由奔放な雰囲気”と“自決の精神”を組み合わせただけのシンプルなものにすれば良かった…というのは後からなら好きなように言える話ですが。

まあ、そんなわけで。
期待せずに鑑賞すれば楽しめるのですが…ついつい厳しい言葉ばかりを言いたくなる作品でした。

あ。あと、一部の出演陣の演技の方向性には期待しない方が良いです。コメディですからね。そう割り切ることも必要ですね。それでも、篠原涼子さんは輝いておりましたな。役柄的に美味しいとも思いますが、何だか魅力に溢れているように感じるのですよね。ただ自分が好きなだけかもしれませんが。

さて。最後に個人的な話。
これにて2016年の感想を締めますが、再鑑賞を含めて、一年間で300本長も映画を鑑賞したのは今年が初めてです。いやぁ。楽しい年でした。それもこれも。ここで感想を書き続けたから、そして皆様方との素敵な交流があったからだと思います。一年間ありがとうございました。
心の底から、よいお年を。
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