大傑作。2025年ロカルノ映画祭コンペティション部門選出作品。アレクサンドレ・コベリゼ長編三作目。長編一作目『Let the Summer Never Come Again』と同じく、ソニー・エリクソンW595の低画質なカメラで撮影された一作。少しでも暗いとこに行ったら何にも見えなくなる、低開発の記憶ならぬ低解像の記録である。主演は監督の実父ダヴィド、音楽と音声は監督の兄ギオルギ、撮影は監督本人が行っていて、後述するが同行者は透明なので、マジでほぼ家族だけで作った作品ということになる。物語はスポーツ写真家のリサが両親に手紙を残して失踪したところから始まる。"探さないで"という彼女の言葉に反して、心配する父親イラクリはリサの同僚レヴァン(透明)と共に、彼女が途中までやりかけていたプロジェクトである"田舎の村にあるサッカー場の取材"の足跡を辿り、彼女を追いかけ始める云々。透明な相棒レヴァンくんは存在が曖昧なだけでなく記憶も曖昧なので、リサの撮影旅行に同行しておきながらどこに行ったか何も覚えていないので何の役にも立たない。ということで、マジで『トレンケ・ラウケン』くらい見つからないまま、186分もの間ジョージアの田舎を彷徨い続ける作品となっている。原題"Dry Leaf"が予測不能な軌道を描くキックを指すサッカー用語らしく、物語も枯れ葉が風に舞うように軽やかに、似たような場所を巡り続ける。