よしまる

人間の証明のよしまるのレビュー・感想・評価

人間の証明(1977年製作の映画)
3.4
 先月、70年代で自分を縛りつけていたらなぜか邦画にハマり、「犬神家の一族」に続いての角川の第2弾「人間の証明」も「この機会にw」観てしまった。

 ほとんど話は覚えてなかったので、結構新鮮に楽しめた。ただ、これが「犬神家」を超える興行成績を収めたことに、宣伝力というものの凄まじさを見せつけられたと同時に、逆説的に中身がスカスカだったということも確認できてしまった。

 金に物を言わせたのか、チョイ役の豪華さは笑えるほど。三船敏郎、伴淳三郎、鶴田浩二て凄すぎん?かと思えばまだ駆け出しの松田優作や岩城滉一、前作に続いての坂口良子らを起用して「新しい邦画」のイメージをしっかり焼き付かせている。さすがとしか言いようがない。

 特に優作。まだ遊戯シリーズをやる前だなんて考えたこともなかった。というかその手の作品はビデオが普及してから観ているから、テレビ放送がメインのメディアだった子供の頃のボクには時系列がわかっていなかったのだろう。
 観たら確実に印象に残る強烈な目ヂカラ、抜群のスタイルから生まれるアクションは優作の際立った存在感を堪能できる。

 山本寛斎のファッションショーやら、謎解きに奔走するも無駄骨な案件やらなかなか現代のペースでは許されないような間延びした演出は時代を感じさせるけれど、けして悪くはない。オールスターキャストを売りにしているのでもないのにやたら名優揃いだから各シーンは面白くないわけがない。

 それより話が出来すぎていて、刑事の松田優作、アメリカの刑事ジョージケネディ、主役の岡田茉莉子と息子の岩城滉一、そして麦わら帽子のジョニー山中、彼らが戦後の時代から遠く日本とアメリカを越えて抱えてきた問題が、ことごとく偶然に絡み合う展開が不自然すぎて冷めてしまう。
 だがどうやらこのご都合主義は森村誠一のお家芸らしくて、映画のせいではない。むしろ逆に読んでみたくなったのでやはり角川の術中にハマっているw

 宣伝と作り方で当たる映画は作れるけれど、そこにどれだけ後世に残る中身を詰め込めるかはまた別問題。この時点では角川の挑戦はまだ始まったばかりだ。