こたつむり

迷宮の女のこたつむりのレビュー・感想・評価

迷宮の女(2003年製作の映画)
3.7
♪ 君の思い通りの花を咲かせよう
  むしり取られ 枯れる前に

ミステリとして正統派。
潔いまでにフェアプレイを貫き通す作品でした。

何しろ、冒頭から“人格”について語りますからね。本作が“多重人格者”の物語であることは明白。逃げも隠れもしない姿勢に感服なのです。

また、脚本の構成や小道具も正々堂々。
指し示す方向性が一つなので、真相を看破できる確率は高いのです。悪く言えば、伏線が伏線になっていないわけで。どんなに上手に隠れても“黄色いお尻”が見えている状態でした。

ただ、大切なのは物語を構成する要素。
七つの生贄。積み重なる腐乱死体。
歪む笑顔。転がるサイコロ。
鎖に繋がれた子供。
そして、ミノタウロスの迷宮…うーん。どれもこれもが猟奇的で刺激的。

それに容疑者である彼女の存在感も見事な限り。彼女に抱いた第一印象が真相に肉薄するヒント…というのは考えすぎでしょうか。でも“表情は雄弁に語る”のは事実なのです(特に医療関係者は…もごもご)。

あと“真相を丁寧に再現したスタッフロール”が余韻たっぷりで好感触。物語のクオリティを上げるのは“切ない想い”なんですね。どんなにツラいことがあっても、心を本当に“千切る”ことは出来ないわけで…。あー。やるせない。

まあ、そんなわけで。
ネタバレ厳禁のフレンチミステリ。
真相を見極めやすい物語ですが、事前情報は仕入れないほうが良いと思います。ただ、進行は緩めなので、物語に食指が伸びない場合は眠気が襲ってくる可能性あり。舌の上で雰囲気を味わうように鑑賞することをオススメします。

それにしても邦題は地味だよなあ。
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