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スターリングラードのこたつムービーのレビュー・感想・評価

スターリングラード(1993年製作の映画)
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Wペーターゼンの「Uボート」をこよなく愛する自分だが「スターリングラード」を(むろん存在は知っていたが)この程ちゃんと見た。

というか、もうガン見。拳の固い秀作だ。

演出やプロットなど所々ハテナはあるが、だからなんだろうかって話。物語が強いので一切関係なし。
ドイツの戦争映画は負けることが運命づけられている。そして「だからこそいい」のだ。この「いい」はむろん単純ではなく大きな意味でだ。戦勝国には描けない浄化がある。Uボート信者として大いに言い切るし、それは日本とて同じこと。

スターリングラードは最悪の市街戦と言われている。最後の輸送機、そして「冬将軍」をこれでもかと描く実写映画。そう、この作品はCG前の「実写映画」としてもスケールがあり評価すべき点だ。
悲惨極まりない戦場に日本は南方戦線がありドイツはシベリアだった。ラストの固さよ。

そして最後のキャプションの通り、シベリア抑留者の多くは生きて戻らなかった。
むろん(好調期の)シベリア戦線でのドイツ兵によるロシア人虐殺も歴史的暗部としてある。このことはあの「子供」に本作は託しているだろう。あの一件以来、物語が大きく変わることを鑑みると創り手のこれまた違う側面の硬い拳を感じざるを得ない。
ともに被害者にしかならない戦争って本当に不幸でしかない。今作も戦争の嫌さを改めて思える力作だ。


【追記】
終盤の地下倉庫。アレはどうだろう。
普通の映画として評すならプロットがちゃがちゃであり、ある意味作品の勢いを削いでいる、とも言える。が、オレは一夜明けこう考えるようにした。


あれは、彼らの夢なのだ


と。むろん監督以下誰もそう描いてはいない。
が、夢と捉えると味わいが変わるし、夢と言っていいほど悪夢的現実なのだから。それにあの中の「誰」の夢とて、構わないからだ。