第二次大戦の最中、スターリングラード攻防戦を題材とした作品。この作戦でドイツ第6軍は壊滅。それによりドイツは東部戦線での戦略的主導権を失うことになる。
スターリングラードでは開戦時60万人いた住民が、終結後は9800人まで激減という…戦争史の中でも屈指の、壮絶で凄惨な争い。
大局を見るだけでは感じることのできない、戦争という悍ましい行為の帰結。
感情が渦巻いて…言葉が出てこない。
真っ暗な闇の中で独りの気分になった。
あまりの冷たさに震えた。
目的は失われ、生き延びようとする意思さえ無慈悲に掻き消されていく…不条理の前には大義も忠節も意味を成さず、狂気が正気に成り代る…冷酷な現実。
本当に…狂ってるとしか言えない。
愚かで、惨めで、救いようがない…
その中でも人らしくあろうとする心さえ、これっぽっちの力もない。一発の銃弾が、全てを閉ざしてしまう。
どんなに感触のいい言葉でも、誤魔化せない。
戦場で苦しむ自分は…
誰が守ってくれる?何が救ってくれる?
終盤、自殺した彼が…まともに思えた。
きっと…狂えなかったんだね。
そんな状況に、人を突き落とす…
それが戦争。
数え切れないものを失っても、それでも愚かに繰り返すんでしょうね…タールみたいに粘り着く黒が思い浮かんだ。
人間はそれに塗れてしまってるのかな?
劇的な事なんて必要ない。
美しく飾る必要もない。
どんな事情があっても…敵味方問わず、戦いが招く結末は同じなんだと思う。
過ちだと知らなきゃいけない。
繰り返さない為に。
それが、私たちが戦争映画を観る意味。
粘性の強い澱みが心に貼り付きますが…
でも、観る価値のある作品でした。