ほーりー

マルタの鷹のほーりーのレビュー・感想・評価

マルタの鷹(1941年製作の映画)
4.0
ダシール・ハメット原作の「マルタの鷹」はジョン・ヒューストンの監督デビュー作であり、それまでギャング映画のわき役だったハンフリー・ボガートの出世作となった作品。

実はこれ以前に2回も既に映画化されているのだがいずれも成功作とはなっておらず、初監督作品であえていわくつきのこの題材をチョイスしたジョン・ヒューストンも勇気あるよなぁと思う。

ある女性(M・アスター)から妹を助けてほしいと依頼を受けた私立探偵のサム(H・ボガート)。早速、サムの相棒が調査することになったのだが、その晩、彼は何者かに射殺される。
相棒を殺されたサムは犯人を捜すが、彼のもとに怪しい人物たちが次々と現れ、ある鷹の置物が事件の核心にあることを知る……。

この映画、ストーリーは複雑だし、登場人物がみんな早口で長台詞を言っているから筋を追うのが大変だし、おまけに重要人物のひとりが台詞上しか登場しないとか、一回じゃとても内容を把握できない作品である。

にもかかわらず、この映画は面白い。

まずキャラクターがみんな強烈。ボギー扮するスペードも海千山千のつわもので一癖も二癖もある人物なのだが、それ以上にペーター・ローレ扮するチビ男・カイロとシドニー・グリーンストリート扮するデブの黒幕・ガットマンのインパクトがルックスも含めて個性が強い。

ローレのなよなよした気持ち悪い喋り方はほんと耳から離れないし、グリーンストリートは台詞がいちいち面白い。たとえば……。

グリーンストリート「あなたは口は固い方ですか」
ボギー「いや軽い方だ」
グリーンストリート「結構。むっつり型は信用できん。しゃべるタイミングが狂います。しゃべるには訓練が必要ですから」

これは和田誠の「お楽しみはこれからだ」にも書いてあった台詞なのだが、これ以外にも色々ボギーに質問して、そのたびに「結構。……」というから面白い。

さらには

「心配におよばない。今まで探すのに費やした時間のほんの追加分だよ。せいぜい5.88%にすぎん!」

おっさん、その小数点以下はどうやってはじきだしたんだヨ!とツッコミたくなる。

あと、本作でグリーンストリートの用心棒をエライシャ・クック・JRが演じているのだが、この頃はまだ普通に格好いい。「シェーン」や「現金に体を張れ」でのあの情けないチビのおっさんの姿は微塵もない(本作でも不憫な扱いはされているのだけれど)。
ほーりー

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