ほーりー

ロッキーのほーりーのレビュー・感想・評価

ロッキー(1976年製作の映画)
4.1
「レイジング・ブル」はやっぱり「ロッキー」の人気に対して、ボクシングって世界はあんな綺麗事じゃねえよ!という反発から作ったものかしら…?
かつてジェームズ・ボンドに対抗して、ハリー・パーマーが作られたように。

しかし何なんでしょうね、鬱屈した気持ちのときに「ロッキー」を観ると、いつもからだの奥底から沸々とファイトがみなぎるような感じになるのは。

ベタな感想だけど、あの「ロッキー」のテーマ曲にパワーがあるんだと思う。
自分の友達で脚本家の卵みたいな奴がいるのだが、執筆で塞ぎこんでいる時は、この曲を聴くと力がみなぎるそうな。

劇中でこの曲がかかるのが、ロッキーがトレーニングで街をランニングしている時。その映し出される街並みの光景は、決して裕福な人たちが住んでいないような環境である。

そんな掃き溜めの中からチャンスを掴み、必死に這い上がろうとするロッキーの姿に、観ているわれわれは純粋に共感を覚えるんだと思う。

個人的に好きな場面は、それまで冷たい態度だったコーチのバージェス・メレディスが手のひら返したようにロッキーに接触するシーン。最初はメレディスを怒鳴り付けて追い返すも、すぐさま追いかけてメレディスを呼び止める。

その間の二人の会話は観客にはわからないが、二人は和解して共に戦うことを誓う。ここが何とも堪らない。

堪らないと言えば、タリア・シャイア扮するエイドリアンをデートに誘って、営業終了間近のスケートリンクで滑る場面。あのときのギクシャクしながらも、段々と二人の心がうち解け合うくだりに、心が暖かくなってくる。

ちなみに、自分が好きな裏話がある。

本作のプレミア上映会のとき、安物のスーツで出席したシルヴェスター・スタローンのもとに、上映後、ある俳優がつかつかと歩み寄ってきた。

「私はジョン・ウエインという者だ。ひと言お祝いを言いたい、いい映画だったぜ」

と言って、その俳優はスタローンに握手したという。無名俳優だったスタローン、この時の感激は生涯忘れないだろうと思ったそうな。

エピソードも含めて、これほどアメリカの素晴らしさを讃えた作品も珍しい。
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