ほーりー

鴛鴦歌合戦のほーりーのレビュー・感想・評価

鴛鴦歌合戦(1939年製作の映画)
4.1
あるイベントで、斎藤工がドライブイン・シアターで観たいものという質問で答えたのが1939年の時代劇オペレッタ「鴛鴦歌合戦」。

ほほぉ、そう来なすったかと、斎藤工やはり只者ではないと痛感。

他愛もないと言えばそれまでだけど、とにかく肩のこらない、ただただ楽しいミュージカル映画。音楽的センスと映像のテンポの良さだけで、80年近く経った今でさえも愛される稀有な作品だと思う。

あらすじは、長屋の浪人・片岡千恵蔵をめぐって、町娘・市川春代と商人の娘・服部富子(作曲家・服部良一の実妹)の恋の鞘当てしている所へ、さらに千恵蔵の許嫁・ 深水藤子が現れて…。

ラブコメのような展開なのだが、中盤は千恵蔵先生がフェードアウトして(終盤チャンバラシーンで活躍するが)、話の中心は、市川と彼女の父役の志村喬、そして市川に惚れてしまったバカ殿役のディック・ミネになっていく。

まず市川春代。すねたときの態度がとっても可愛い。千恵蔵を服部に取られた時の、「あんまりよ…く~~ん」とモジモジっぷりが印象的。

お次は、のちに黒澤映画の顔となる志村喬(まだ34歳!)。この頃から老け役を演じているのだが、歌は本職のディック・ミネが舌巻いたと言われるほど上手い!

さーてさてさて この茶碗~♪ちゃんちゃん茶碗の音も響く 道八茶碗は日本一じゃ 見いたか聞いたか 聞いたか見たか~♪

もう、映画を見終わったあと、ずっと志村の歌声が脳内リピートしてしまう。改めて「生きる」の「ゴンドラの唄」はわざと下手に歌っていたんだなと感じた。

そして最後、やっぱりディック・ミネにとどめをさす。ヒヨコが五つ乗ったなど巨○伝説(ホンマですかいな)で名を馳せた歌謡界の大御所が本作で演じたのは、ずばり、歌うバカ殿。これほどピッタンコの配役もそうはないと思う。

のちに万年不良老年と言われたミネもこん時はまだ31歳。志村が34歳、千恵蔵が36歳、市川が26歳、服部が22歳、深水が23歳、マキノ監督が31歳、撮影の宮川一夫も31歳、音楽とオペレッタ構成の大久保徳二郎とシマキンが31歳と30歳…。

本当にみんな若い。若い世代が青春真っ只中で作ったこの「鴛鴦歌合戦」。今もって色褪せないで人を惹き付ける理由はこういう所にあるのではないかしら。
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