カラン

アイガー北壁のカランのレビュー・感想・評価

アイガー北壁(2008年製作の映画)
4.0
久しぶりに山岳映画。なかなか面白い。山の映画って面白いの多いよなあ、潜水艦系同様に、、、。

ヨハンナ・ヴォカレクJohanna Wokalekさんという女優さんが、山男たちの幼馴染で、ひょんなことからアイガー北壁の麓で取材することになり、さらに事態が悪化して、アイガーの坑道にまでやって来ることになる。当然のことながら、未到の山中で死にそうな山男と見守る女たちのカットバックが継起するのだが、この女優さんは映画に入り込める役者で、さほどに鬱陶しくない。しかし、年を取った後年の彼女から始まり、ラストもまた彼女に戻るがゆえに、全編がレトロスペクティブで構成される。この構造が、山の映画から山の威力だけを映すべきという動機を奪ってしまう。


1936年のベルリンオリンピックの開会の辞を述べたのは、かのヒトラーであった。この時期は、少し前のロシアのように、或いは、これから追い込まれていくロシアがたぶんこれからそうなるように、ナチスドイツのナショナリズムが高揚していた時期なのかもしれない。そしてオリンピック。映画の説明によると、アイガー北壁はその荒ぶる天候で挑戦者を次々に跳ね返し、登頂失敗を強いるのはもちろん、生きて帰ることすら許さない恐るべき「死の壁」として立ちはだかること甚だしく、いよいよ登山禁止の令まで出た。が、各国の山登りたちが集まり、やいのやいのと報道陣が詰めかける。

山の映画で、ロングショットがビシッと決まっているのが意外にもあまり記憶がない。この作品はなかなか良い。ただカメラは山肌を何度も舐めるようなミディアムショットで捉えるのだが、黒色の岩石で覆われた山の表面が非常に美しい。

アプザイレン。ただ、ただ、アプザイレンに捧げられた映画であってよかった。アプザイレンって、ザイルを使って下降運動ね。ザイルを切る者、ザイルに吊るされる者。もう10分間、吊してくれてもいい。その時は長回しでいい。よその場面とどうしても繋げたいならゴダールみたいに声だけ入れるとか。ないか。(^^)

なお、レンタルしたDVDだが、マルチサラウンドで、サラウンドスピーカーからは、ごーっていう風の音がずっとしてる。良いんだけど、フロントともっと繋げて、風に動きを出したほうが面白いだろうな。
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