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荒野の女たちのzhenli13のレビュー・感想・評価

荒野の女たち(1965年製作の映画)
5.0
すごかった。泣きながら観てたら急に終わった。これがジョン・フォードの遺作!
ロバート・アルドリッチの遺作が『カリフォルニア・ドールズ』だったことと符合してるように見えるのは偶然なのかそうじゃないのか??

アルドリッチと違うのは、アン・バンクロフトの行動が明らかにどうにもならないこと。それを批判してるのではない。そこで犠牲にする必要があったかもわからないどうにもならなさ。
教化という彼らにとっては絶対的な善、中国人を明らかに下の存在として扱う白人たち、モンゴル人と思われる馬賊を徹底的に野蛮なマチズモの象徴として置かざるを得ず(というか戦争という極限下では国家民族関係なく男たちが蛮行におよぶことは記憶に新しい)、あの女たち(若いスー・リオンを除いて。彼女は寧ろそれを目の当たりにして、今後どう身を処していくのか)それぞれが抱えるどうにもならなさを、監禁された狭い空間の中でそれぞれ露わにしていくことで、ある程度カタルシスとなっていたのかもしれない。フローラ・ロブソンの伝道所長が自身でも認められないセクシャリティ。アン・バンクロフトは男勝りであるが、どちらかというと女性ゆえに医療従事者として低く見られることに抵抗するための態度であるようで、セクシャリティは明らかではない。また信仰に身を捧げた中年女性それぞれがある意味蓋をしてきた性というもの。信仰と関係無くたまたま高齢初産妊婦としてそこにいた女性。高貴な生まれでありながら白人女性に仕え、馬賊に辱められた現地出身の女性。女たちの複雑な様相とともに、『三人の名付け親』のように、新たな命の誕生(ここで赤ん坊の存在感は希薄であるものの)に対してどう身を処するかを提示する。
フォードは実は、人の覚悟というものを男女の区別無く描こうとしていたのではないか、とも思った。こないだ『荒野の決闘』を観てても思った。

アルドリッチ組のエディ・アルバートは『ロンゲスト・ヤード』の悪徳刑務所長に続くいい役だった。ここでは聖職に就きたくて無謀な転職をし、おどおどと女たちに従っていたのが、妻の出産と馬賊の襲来で初めて覚悟を決める。

So long, Ya basterd!


2022/9/18
この回の次に私は『荒野の女たち』を再び観たのだけど、この『メアリー・オブ・スコットランド』から『荒野の女たち』という並び、よくぞやってくれたと感嘆した。素晴らしい二本立てとなった。「女性」とはいったい何なのかについて『荒野の女たち』は『メアリー・オブ・スコットランド』のアンサーソングならぬアンサーフィルムとなっている。だけど明確な答えはない。

『荒野の女たち』でアン・バンクロフトが「ここにいる女は全員普通じゃない」と言い捨てた女たちも彼女自身も「ひとりの男を本当に愛したこと」「子どもを産んだこと」からおそらく程遠い。高齢出産したベティ・フィールドと若いスー・リオンを例外として。
窓から月光が差し込む幽閉部屋に散らばって座り横たわる、バンクロフト以外の七人。彼女らはシネマスコープいっぱいにカラヴァッジォ『聖マタイの召命』のごとく配置される。その静謐さはジョルジュ・ド・ラトゥールの方が近いかもしれない。
それまでほとんど感情を出さなかったアイリーン・ツーが画面のごく端っこで、犠牲となるバンクロフトの腕に手を置く瞬間。今生の別れに思わずバンクロフトを抱きしめるミルドレッド・ダンノックの頬にキスをし返す瞬間。信仰のもと忠実に仕えてきたダンノックはその後、バンクロフトを娼婦と嘲るマーガレット・レイトンに「黙れ」と罵倒する。
さまざまな相を見せる「女性」としての、彼女ら。


https://filmarks.com/movies/49382/reviews/141133211
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