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砂の女のgenarowlandsのレビュー・感想・評価

砂の女(1964年製作の映画)
4.5
安部公房原作。勅使河原宏監督の、かの有名な「砂の女」観ました。すごく好き。エンドレスリピしたいくらい。レビューはまだ一回観たくらいじゃ書けないです。砂丘に昆虫採集に来た理科の教師(岡田英次)が、砂丘のすり鉢の底に住む女(岸田今日子)から逃れられなくなる話。シュールで前衛的で、全部が好み。いくらでも深読みができそうで、それも楽しい。

パッと思い付くには、女は男が採集した蟻地獄みたいなハンミョウの幼虫なんだろうとは思うけど。それ以上の含みがありそうで、抜け出せない男と女、観察して分析する傍観者とそこにしか生きられない者。

岸田今日子の汗ばんだ砂まみれの肌のエロス。決めつけた言い方以外は選択不可の運命が、男を砂の底に慣れさせていく。

少しずつ鬱陶しかった砂が身を守る大切な砂に見えてくるから不思議。

一回目で感じたのは、社会階級を描いたと思われ。戦後に整備されてきた社会制度の外にあり、社会保障も受けられず、社会の底辺にいる人びとに、仕事はこうした方がいい、こうすべきだと、理屈を述べる学者や傍観者のインテリに対して、まずはどんな暮らしでどういう環境なのかを経験してから言いなさいと、傍観者を一度底辺で暮らさせて、どんなに這い上がろうとしても這い上がれない蟻地獄みたいな砂丘の底のような社会環境。這い上がることを諦めて、その中で適応して暮らすしかない。日々、自転車操業で、1日の半分は砂を掻くような生産性の低い仕事にエネルギーが使われる。世界は狭く、村社会。村の外に社会が広がっていることも忘れてしまう。外を知ることは己の現実を知ることでもあり、砂は外の社会から隔て、身を守ることでもある。興味をもたれても、すり鉢の底までは誰も降りてこようとしない。人びとの無関心によって身を隠すことができる。そういう社会の底辺の人びとを傍観する社会やインテリへの批判なんではなかろうか。
一回目なので、そんな風に思いました。

あ~おもしろかった!
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