Kuuta

風と共に去りぬのKuutaのレビュー・感想・評価

風と共に去りぬ(1939年製作の映画)
4.2
いつ見よういつ見ようと長年思い続けて、午前10時の映画祭にてようやく初鑑賞できた。

メインの4人はいずれも漫画のように色分けされた性格の持ち主だが、その性格を本当に貫けるのか試されるような場面が多く、ドラマが一面的になっていない。女好きのバトラー(クラーク・ゲーブル)がスカーレット(ヴィヴィアン・リー)の愛を得られず、娘に傾倒していく。不倫が疑われる誕生会でのメラニー(オリヴィア・デ・ハヴィランド)の態度は、形だけ見ると「メラニーは終始聖母のようだった」んだけど、心中穏やかではなかったのでは、と観客側が想像できる。職業柄なかなか表立っては出てこない娼婦のベルの思いも泣かせる。

しかもその内心をセリフでほとんど語らせないので、全く冗長になっていない。3時間52分あるのに冗長にならないって相当すごい事だと思う。テンポの良いドラマだけで構成され、かつこの上映時間ということで、かなり濃密な映画になっている。見終わって少し経った今も頭が情報処理できていないし、細部まで注視する余裕も全然無かった。

作り込まれた巨大なセットの数々に、とにかく金掛かっているなぁと驚かされた。序盤の舞踏会の色鮮やかさに感動。南北戦争の負傷者がカメラの引きとともに広がっていくシーンは唯一無二だろう。

前半ラストシーンの、真っ黒なスカーレットの表情が浮き上がってくる所など、影絵のような見せ方が強烈な印象を残す。カラー映画の黎明期だからと言うべきか、黎明期なのにと言うべきか。

時代に翻弄されながら我を通して生き抜いたスカーレット。まさに大河ドラマの定番。戦争が終わり、苦労を重ねて生活は豊かにはなったが、心は満たされない。戦後日本でヒットしたのは当時の観客が自分の境遇に重ねた部分もあったのかもしれない。個人的には、「霧の夢」に象徴されるスカーレットの内的な葛藤にフォーカスされる後半よりも、単純に時代の変化がドラマチックだった前半の方が面白かった。83点。
Kuuta

Kuuta