ひでやん

マイ・マザーのひでやんのレビュー・感想・評価

マイ・マザー(2009年製作の映画)
3.9
破壊の衝動と、元に戻す行動。

グザヴィエ・ドランが17歳の時に書き上げた半自伝的な物語で、19歳の時に監督・主演を務めたデビュー作っていうから驚き。雑誌をパラパラと捲るようなモンタージュ、モノクロの独白、背後からのスローモーションやジャンプカットなど、繊細な内面描写と大胆な映像表現に美的センスを感じる。特に印象的だったのがドリッピング。壁に叩きつけるそのお絵描きは、滴り落ちる芸術だった。

母親との関係にもどかしさを抱える少年の苦悩と成長を描いた今作は、自ら主演を務める事によってドラン自身の内面をさらけ出している。その感情の表出に何度か共感した。「すべてを話すには百年もかかるんだ」とハイになって言ったかと思えば、「母さんとは縁を切ってもう二度と話すことはない」と言うユベール君。

友人や恋人と違って親子は切っても切れない関係なので甘えがあり遠慮がない。小言を言われると鬱陶しくて、ほっとかれると楽だがちょいと寂しい。互いに機嫌を損ねたり機嫌を取ったり。言いたい事を言い合って衝突すれば、思ってもない事を口にしたり。母の服を見て「悪趣味」だとユベールが言った時、少しは褒めてやれよと思ったが、寄宿学校からの電話にキレるシーンで、「それな」と笑った。リボンにジャラジャラとチェーンが付いたピンクの服…どこで見つけてきたんだ笑。

「愛してる」が切り札のように何度も使われたが、岩場で座るラストの沈黙がなによりも親子を語っていた。
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