ひでやん

ピクニックのひでやんのレビュー・感想・評価

ピクニック(1936年製作の映画)
4.0
緑が目に浮かぶモノクロの自然美。

田舎者は都会に憧れ、都会人は田舎の自然を愛す。というわけでパリジェンヌは草の上の昼食がお好き。お気に召すまま戯れて。

漕いだ分だけ大地から離れ、少しだけ空の青に近づくブランコ。無邪気なその姿は光と戯れる妖精のようだ。草の匂い、降り注ぐ木漏れ日、肌を撫でる風、キラキラと乱反射する川面。穏やかな陽だまりの中で胸に込み上げてくる優しさ。毛虫が顔を出しても怖がらず、美しい蝶の姿を想像する娘。

サクランボの木の下で言葉を交わし、ウグイス鳴く木の下で閉じ込められた想い。誰も知らない2人だけの空間…。

切ないわ。未完で終わった40分の中編は、乙女心も未完で終わった。婚約者と結ばれても、尚もくすぶる残り火。決して完結させない罪な男。川面に落ちる雨粒や流れる雲は娘の感情を映し出しているようだった。結婚を控えた娘とその母を船に乗せ、入れ替わるペアリング。ウグイスの声を聞いてからラストまでの短い尺で、日曜日のひとときを永遠にする展開は見事。なんとも切ない話。
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