めしいらず

細雪 ささめゆきのめしいらずのレビュー・感想・評価

細雪 ささめゆき(1983年製作の映画)
3.9
没落していく船場の名家の四人姉妹と、彼女らを取り巻く男たち。三女に次々舞い込む見合い話を軸に一家の春夏秋冬が綴られる。姉妹は誇り高くかつての栄華にしがみつき未だ浮世離れしていて、実生活の何たるかを今ひとつ理解していない様子。未だ少女のようにキャッキャと騒いでいる。夫たちは姉妹の行き届かなさや不始末の尻拭いに一年中駆けずり回っている。彼女らは頑なに変化を拒んで来た。それでも時流は必ず侵入して来て変化を余儀なくさせる。過去にいつまでも執着していてはおまんまの食い上げである。家族だっていつまでも一緒にはいられない。ついに離れる時が来たのだ。それぞれが己の新天地を目指し、家族は離れ離れになっていく。
四季折々の情景を、着物の極彩色を、日本家屋を、美しく切り取った市川流の画作りの粋。個々の人間味に厚みがあり、こと魔性の三女と優柔不断な次女の夫の間の、あるようなないような思わせぶりな関係性がエロティックだ。侘しい酒を呷る今と華やいだいつかの花見を懐古するラストの悲哀。この映画のその場面だけ和田夏十が病室で脚本を書いたのだと言う。そこには妻であり脚本家の和田(本作完成の直前に逝去)から、夫であり監督の市川崑へのメッセージが込められているようだ。二人の盟友関係を思って観ると尚切なさを掻き立てる。
再鑑賞。
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