めしいらず

エターナル・サンシャインのめしいらずのレビュー・感想・評価

エターナル・サンシャイン(2004年製作の映画)
3.7
元恋人が別れを機に自分との記憶を消去してしまったことを知り、ショックを受けつつも自分も同じようにしようとする主人公だったけれど…。恋愛関係が少しずつ馴れ合いになり冷めていき、やがて相手の美点よりも粗ばかりに目が行きがちになっていく必然。決して避けられない。それは相手との信頼関係に由来した互いの甘えが根っこにあるのだろう。破局。恋愛がどれほど本気だったかに比例して別離の辛さも増す。愛情が深ければそれが裏返った時の憎悪も相応に深くなる。こんな不幸を背負うくらいなら最初から無かった方が良かった。この辛い記憶が消せたらきっと楽になれるだろう。確かにそうかも知れない。では恋愛は結局は無駄な時間なのだろうか。とかく人は今あるより新鮮な感情に囚われ易い。本当に恋愛は不安や苦しみ悲しみだけしか残さないのだろうか。そんな筈がない。今は憎悪に塗り込められて見えずにいるけれど、その下にはどんなに相手のことが好きだったかが同じ分量だけ隠れている。例えこの恋は実らなかったとしても、その経験の種はいつか必ず花を咲かせる。本気で好きだったなら結果によらずそれは無駄な経験にはなり得ないのだ。そして悲しみを知って人は深まっていく。あまりにも残酷なSF設定の妙に尽きる。記憶から恋人が確実に消えていく絶望感と、それに耐えかね引き返そうとする主人公の悲哀の美しさ。
再鑑賞。
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