けんたろう

男はつらいよ 花も嵐も寅次郎のけんたろうのレビュー・感想・評価

5.0
のちのドタキャンカーネルおじさんのおはなし。


別府でもどこでも変わらず皆を笑わし、男の前でも女の前でも変わらず弁が立つ寅さん。その恋愛玄人で江戸っ子気質の人柄が俺はやっぱり大好きだ。

一方、今回のゲスト・沢田研二が演じる青年は、惚れた女の前ではチンパンジーの話一辺倒という、イケメンフェイスとは似ても似つかない大変なぶきっちょ野郎だ。そのぎこちなさが最高に可笑しいんだけれど、哀しくてもあってすごくもどかしい。
だけど、もどかしいから腹が立ってくるということは一切なく、寧ろサッパリしてい、かつ情緒を味わえるのが、彼の、そして今作の、もっと言えば『男はつらいよ』シリーズの良い所なのかもしれない。

兎にも角にも、そんな青年と美女(田中裕子)のロマンスがまぁ堪らないのだ。
二人の名演がゆえなのだろうか、錆びだらけの観覧車がこれでもかと情感たっぷりに映って涙を誘うシーンなんかは、きっとこの先何十年経っても忘れないだろう。


最後に一つ。
未熟な若者2人の庇護者として一役買うも、結局は一番不器用な寅さんがこんな事を呟いていた。

「やっぱり二枚目はいいな。ちょっと妬けるぜ。」

でもよ、寅さん。
俺は、何をしても何を言ってもイキでイナセなあんたに妬けるぜ。