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ペーパー・ムーンのほーりーのレビュー・感想・評価

ペーパー・ムーン(1973年製作の映画)
3.8
引き続いてテイタム・オニールの代表作というよりも出世作である「ペーパー・ムーン」を。

確かまだ男女含めて史上最年少でアカデミー賞を受賞した記録(なんと10歳!)はまだ塗り替えられていないはずだと思う。

舞台は不景気の真っ只中だった30年代のアメリカ。雰囲気も出すために映画自体もモノクロで撮影されている。

葬式の場面から本作ははじまる。母一人子一人だった少女アディはその母親を交通事故で亡くして一人ぼっちになってしまう。

不憫に思った周囲の人はアディを遠方に住む伯母のところへ届けようと、葬儀に参列した男にアディを頼むのだが、母親とは旧知の仲というこの男、実は聖書を売りつける詐欺師だった。

商売の邪魔になって仕方ない男は何とかアディを置いて出発しようとするが、9歳とは思えないほど知恵の回るアディにかえって翻弄されてしまう。

奇妙な二人による珍道中の幕が開ける……。

元々は小説が原作。タイトルは「アディ・プレイ」でこのタイトルじゃあなあ……と思ったピーター・ボグダノヴィッチ監督が30年代当時のヒット曲から付けたのが「ペーパー・ムーン」である。

本作のキー・ビジュアルであるお祭りの張りぼての月は原作にはなく、タイトルが決まったあとで用意されたというから面白い。

このアディちゃん、大人顔負けに頭がいい上に生意気で、おまけにタバコも吸っちゃうような強者。

どこか頼りない詐欺師の男も彼女に振り回されるが、やがて彼にとってアディがかけがえのない存在になっていく。

劇中、アディが何度も男に「わたしと顔が似ているけど、ひょっとしたらわたしのパパ?」と何度も聞いてきて、彼はその都度否定するのだが、この男を演じているのがアディ役のテイタム・オニールの実父であるライアン・オニールである。

ボグダノヴィッチ作品の常連だったライアンだが、アディ役の女の子を探してたところ、誰かからライアンの娘(笑)がピッタリだよと言われて会ったのが、監督とテイタムの最初の出会いだったいう。

とにかくテイタムのハスキーな声がこの役柄に見事はまっている。

ラストシーンは「モダン・タイムズ」を彷彿させる。

■映画 DATA==========================
監督:ピーター・ボグダノヴィッチ
脚本:アルヴィン・サージェント
製作:ピーター・ボグダノヴィッチ
撮影:ラズロ・コヴァックス
公開:1973年5月9日(米)/1974年3月9日(日)
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