カフカのオテサーネク

イキガミのカフカのオテサーネクのレビュー・感想・評価

イキガミ(2008年製作の映画)
5.0
国の法律で18歳から24歳までの若者がランダムに命を奪われるディストピアを描いた『死ぬまでにしたいこと系』オムニバス映画。

死神のごとき『死亡予定書配達員』から自分の死ぬ日時を知らされるところからその人の最後の一日が始まる。

人生最後の一日を何に使うか?
自分の人生を踏みにじってきたクズへの復讐?
親友を犠牲にしても叶わなかった夢に向かって燃え尽きる?
これから独りで生きていく最愛の妹のために希望の光を残す?
虚栄心に狂い人の心を失った親を始末する?

それぞれの人生のエンディングに立ち会う配達員の表情はいつも曇っているのが印象的。

人生の最後に夢を叶えたストリートミュージシャンの魂を燃やすような絶唱を感動コンテンツとして消費しようとする社会に嫌気が差す。

…と思ったけどこの映画自体も人の死を娯楽として消費してるし、それを観て一喜一憂している自分という特大ブーメランにさらにげんなり。


そういえば主人公のオフィスを見て『リベリオン』の無機質オフィスを思い出したけど、もっと過去を辿ると『未来世紀ブラジル』の情報省が源流なのかしら。

未来世紀ブラジルといえばもう一つ、劇団ひとりの豹変もブラジルイズムを感じた。

あのキチガイ女性議員を見て女帝小池百合子を思い浮かべたのは私だけではないはず。

所々に挟まる監視カメラ映像の気味悪さとラストシーンの切れ味の良さは絶品。
『この国には自由がある』