Tラモーン

レイジング・ブルのTラモーンのレビュー・感想・評価

レイジング・ブル(1980年製作の映画)
4.0
ロバート・デ・ニーロという役者の底力をまざまざと見せ付けられた2時間。

冒頭で饒舌に話す男はこの作品のポスターとは似ても似つかないブクブクに太った姿で、まさかこれがデニーロだとは思わなかった。

そこから10年以上遡る1940年代。レイジングブルの異名をもつボクサー、ジェイク・ラモッタを演じるデニーロの絞り込まれた肉体と、粗暴にギラつくそのルックスは冒頭の太った中年とはとても思えない。
この作品内でどれだけの体重調整をしたのだろうか。流石の役作りには脱帽する。

凄いのは肉体的な役作りだけじゃない。マフィアの八百長に乗らず自分の拳で成り上がると強い意志を持ったボクサーが、愛する女性を手に入れ、チャンピオンベルトを手に入れ、富と名声を手にしながらも、狂気とも取れる猜疑心に飲み込まれ、愛する人に見放され凋落していく痛々しくてギスギスした演技が凄まじい。

ミュージシャンとかボクサーとか、生まれが恵まれてたわけではない人が努力で成り上がるストーリーにはこういう危うさが付き物。周りからしたらジェイクは付き合い切れない奴かもしれないけど、ああいう人間にはなんとも言えない愛しさがある。

ドラマチックな半生ではあるものの、実話に基づいた淡々とした作品でここまで見せ付けられるのはデニーロの演技の賜物だろう。

「カジノ」を観たあとだから、デニーロがイカれててジョー・ペシがまともなのが意外な感じだったなぁ。


ボクシングのシーン、劇画調とでも言うべきかめちゃくちゃ迫力があってカッコよかった。ぼくは高校の頃ボクシングをやってて、まさに自分がそのタイプだったから、ああいう頭を下げてベタベタに打ち合うファイターが大好き。特に左フックが武器なとこなんて勝手に親近感。
「シンデレラマン」とかもそうだけど、40年代とかの古いボクシングスタイルはスタイリッシュ過ぎず、所謂拳闘っぽい雰囲気が残っていて泥臭さがたまらない。


「みんなやっつけろ!俺がボスだ!」
ジェイクには立ち直って、その後の人生は幸せになって欲しいなぁ…。
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