Tラモーン

極限境界線 救出までの18日間のTラモーンのレビュー・感想・評価

3.8
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9.11後、タリバン政権崩壊後の2006年。キリスト教宣教のためアフガニスタンを訪れていた韓国の民間人23人がタリバンに拉致される。韓国軍の撤退と、刑務所に収監された戦士23人の解放を要求するタリバンとの交渉のため韓国外交官こチョン・ジェホ(ファン・ジョンミン)が派遣される。人質殺害までのタイムリミットは24時間。しかしアフガニスタン政府はタリバン戦士の解放を拒絶する。


『モガディシュ 脱出までの14日間』のときも感じたけど、韓国は海外を舞台にしたスケールの大きい映画も高いクオリティでつくれるのか…と感服してしまう。

9.11後のアフガニスタンを巡る当時の国際情勢に迫った実話ベースの作品でありながら、韓国映画らしい派手な脚色を加えつつ、緊迫感のあるエンタメ作品に仕上がっている。

「テロリストには屈しない」がセオリーとされる外交手法に対して、人質たちを無事に母国に帰すことに命をかける対照的な主人公2人が熱い。

いつのまにかシュッとした役が似合うようになってきたファン・ジョンミン演じるチョン・ジェホは外交官として高いプライドを持ち、決して役人仕事では片付けない人情に厚い高潔な男。

対するヒョンビンの演じたパク・デシクは韓国情報院の工作員。表舞台で活躍するエリートのジェホとは違い、イスラム世界に精通する人脈と経験を武器に暗躍するが、その実はジェホと同じくらいの人命を救うことに信念を持つ熱い男。

序盤、アフガニスタン政府にタリバン戦士の解放を認めてもらえたかと思いきやあっさり裏切られるあたりからの、他国では介入することのできないアフガニスタンに残る根強い問題がリアルに描かれていて面白い。

タリバンが如何にアフガニスタンで恨まれていること。国内での問題解決が非公式のジルガ(部族長会議)に左右されること。イスラム教以外の宗教が忌避されていること。混乱に乗じて悪事を働くやつらがいること。
イスラム世界だけに通じる交渉手段やモノの考え方がリアリティあってよかった。
ジルガで2人がファイヤーダンスやハシシを受け入れる辺りなんか妙に生々しい。そしてその後の部族長の怒りを買うところも。

骨太で盛り盛りなストーリーもさることながら、二転三転する状況の中で徐々に人命救助に対するお互いの思いの強さに共感していくジェホとデシクのバディ的な関係性がやっぱり1番の見どころなのかな。

最後の交渉に向かう場面で自決用の錠剤を渡すとこなんて文字通り命をかけて仕事をしていることを認め合っている関係だけでしか成り立たないでしょう。

ジェホの最後の切り札の交渉術は「んなわけあるかい!」とも言えなくもないけど、さすがファン・ジョンミンの演技力で説得力を持たせている。

"俺が羨ましいと思うのは帰るところがある人"
"帰るところがない人はいない"

エピローグまでかっこいいんだよな。

2人の間を取り持つようなこの作品唯一のコメディリーフのカン・ギヨンもいい味だしてたわ。
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