しんご

ニュースの天才のしんごのレビュー・感想・評価

ニュースの天才(2003年製作の映画)
3.7
アメリカで権威のある「ニュー・リパブリック」誌の花形記者であったスティーブン・グラス氏の記事捏造事件をベースにした映画。なんと同氏の在任中41の記事の内、27が捏造だったというとんでもないスキャンダル。

「トークの厚化粧はいいけど整形はあかん」...とあるバラエティ番組での千原ジュニアの言葉だけど、0を1にする(=捏造する)お笑いはエンターテイメントとしてご法度であることを端的に示した表現だなと感心した。

ジャーナリストは真実の報道が前提だけど、その「真実」が大衆に受け入れられるかはまた別で、劇中のニュー・リパブリック誌も政治雑誌なのに大衆受けを狙った記事がウケ、低俗化していることが上層部の悩みのタネとなっている。

真実に「もっとこうだったら面白いのに」という願望が介在することでジャーナリズムがエンターテイメント化し、そこに「創作の天才」グラスが現れたことで歯止めのきかない不祥事を招く訳だけど、それを求める大衆がいる限りまたどこかでグラスの様な者が暗躍してしまう、と思わせる闇が怖かった。

そして、ヘイデン・クリステンセンはそんの闇落ちが似合い過ぎるくらい似合う。他責思考でどんどんボロボロになっていく過程は完全にアナキンで、ラストシーンは自業自得なのにまぁ無情すぎる。

余談だけど、原題「Shattered Glass」の「Shattered」は「砕け散った」の意味で、砕け散る対象が「ガラス」「グラス」のダブルミーニングになっている洒落が面白い。
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