しんご

タンポポのしんごのレビュー・感想・評価

タンポポ(1985年製作の映画)
3.9
誰しも生きていく上で避けては通れない「食欲」、そこから繋がる生きるための欲、性欲を描いた作品。伊丹監督の映画は登場人物に無駄な会話がないのが(アドリブを一切許さない演出方針からか)凄い見やすいし、邦画なんだけどあんまり邦画ぽくないのがいい。

宮本信子演じるタンポポが切り盛りするラーメン屋の再建を図るのが基本ストーリーだが、サイドに印象的なオムニバスストーリーが散りばめられている。極めつきは井川比佐志さん登場するチャーハンの話で、あの泣かせ方は他の作品では少なくとも見たことないし、これからも忘れないくらいに号泣した。また、別エピソードでフランス料理店ウェイターの橋爪功がほくそ笑むシーンも面白い。料理への権威主義へのシニカルな描き方にほどよい毒がある。

当たり前だけど登場人物がみんな若い。渡辺謙が20代だし、主に性欲パート担当(?)の役所広司は顔立ちがきれい過ぎて今の濃ーい感じとは別人。

最後の最後まで「食」を描くエンドロールまで見逃せない一作。鑑賞後にはラーメン食べたくなる。ちなみに、ワンオペで客の注文と順番を全て覚えている店主の立ち食いラーメン屋、あそこに行きたい。
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