しんご

アイリッシュマンのしんごのレビュー・感想・評価

アイリッシュマン(2019年製作の映画)
3.8
伝説のマフィアであるラッセル・バファリーノの配下でヒットマンを務め、当時の大統領の次に権力を持つ男と評された全米トラック運転手組合のリーダー、ジミー・ホッファを暗殺したと言われるフランク・シーランの半生を描いた作品。

●良かった点
ロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノ、ジョー・ペシの3大スターの競演に尽きる。この3人が画面に出て会話するシーンは、若手の安っぽい銃撃戦の100倍くらい怖くて恐ろしい。この重厚感があるからこそ、アメリカの暗部たる歴史が説得力をもって伝わってくる。スコセッシ監督が割と描くけど、悪の道に1回足を踏み入れると一生そこから抜けられず、またその報いを受けるというメッセージが今回は3時間半の長尺でたっぷり描かれていた。シーランの娘ペギーから見る「悪への拒絶」が個人的には印象に残った。あの娘が多くを語らない演技なのがまたいい。

●入り込めなかった点
主要キャストの「若い頃→老人」までをデ・ニーロ、パチーノ、ペシ3人がずっと演じている。若い頃の彼らは今の彼ら(=全員70代後半)をCGで若く処理する演出がなされているけど、いかんせん演者自体が高齢である点は変わらないので、やはり演出的にはスピード感に欠けやや冗長に感じる部分が多かった。若い時のデ・ニーロの動きが既におじいちゃんで雑貨屋の親父を蹴るシーンとかも迫力がなかった。同じスコセッシ監督のマフィア物の「グッドフェローズ」(90)がテンポや役者陣の全盛期の若さ(デ・ニーロとペシはこれでも共演している)が際立っていただけに、どうしてもそこと比べると辛くなってしまうものが。

とはいえ、ラスト30分の哀愁は見ごたえがあり切ない気持ちになった。あれは今の年齢のスコセッシ監督でしか描けない業だなと思った。
しんご

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