円柱野郎

八つ墓村の円柱野郎のネタバレレビュー・内容・結末

八つ墓村(1977年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

横溝正史の同名小説を原作にしたミステリー映画。
関東の空港で働いていた主人公は、ある日、新聞の尋ね人欄で自分の名を見つけるが、それは出自にまつわる因縁めいた事件の始まりだった。

「祟りじゃーっ!」のセリフが有名な作品で、自分も映画を観る前からこの台詞だけは知っていたけど、原作未読の身としては逆にこの台詞のせいで内容の方はあんまりイメージがつかなくなってしまっていた。
「金田一の出てくるミステリーで祟り?」
でも実際に観てみると、これほど端的にこの映画の内容を言い表すセリフもないな…と感心した次第。
そうそう、ミステリーの皮をかぶったオカルト映画だった。

実際、原作は探偵推理小説だし、実際に劇中で名探偵・金田一は事件の状況から真犯人を推理して言い当てはするものの、「動機や方法はよう分かりましたが、物証、証拠は…?」という問いに「この事件はね、そんなことよりも…」と返すあたりが…。
もう推理モノの大事なところを放棄している。
(だけど金田一役が渥美清だと、なぜか許せてしまうんだがw)

しかし実際問題としては、「そんなことよりも」という台詞は裏にあるもっと漠然とした因縁の方が大ごとだという振りでもある。
祟りに見せかけた殺人事件ではなく、話を「本当の祟り」にしてしまうことで映画全体が一本筋で締まったのも事実。
まあ正直、俺自身は脚本が橋本忍ってだけで無意識に受け入れちゃっているところもあるかもしれないんだけどw
でも「祟りじゃー!」を聴いた観客が、「何言ってんだこいつ」から「マジだったのか…」という驚きに変える仕掛けは良いと思うんだよね。

一方で真犯人が夜叉になり、さらに暗闇の鍾乳洞の中での追いかけ合うところまで突き抜けてしまうと、滑稽さに落ちてしまうギリギリのところな気もするけれど…。
でもそこを落ちずに踏みとどまれるところが、すごいと言えばすごいところか。

主演は萩原健一。
状況に振り回される役だが、さらに終盤は殆ど鍾乳洞に隠れているので活躍しているのかいないのか。
金田一役は前述のとおり渥美清だが、服装も洋装だし他の映像作品(特に市川版)とはイメージが違う感じ。
でもこれはこれで、渥美清のイメージがオカルト話の不気味さを中和している感じもあって悪くない。
全体的に「男はつらいよ」の寅さんとも違ってずいぶん抑えた演技でもあるけど、エピローグのワンカットだけ喜劇調を発揮してるね(サービス?w)

そして事件のキーとなる過去に32人殺しをした多治見要蔵(山崎努)のビジュアル。
モデルとなった下山事件の犯人の格好になぞらえたものだけど…メチャクチャインパクトあるわ。
円柱野郎

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