きなこみるく

シンドラーのリストのきなこみるくのネタバレレビュー・内容・結末

シンドラーのリスト(1993年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

繰り返される悲惨なシーンに息をひそめ、たまに来る平穏なシーンで息を整える、そんな映画だった。そのため見終わる頃にはすっかりエネルギーを消耗していた。
あまりのことにしばらくショックで動けず、感想を書くのにも時間がかかってしまった。
でも見てよかった。素晴らしい作品だった。

うさぎを狩るように、虫を潰すように、いとも簡単にユダヤ人を殺すドイツ兵。
そんな中で印象に残ったのは、収容所での結婚式と、ドイツ兵に蜂の巣にされるくらいならと、医師が寝たきりの患者に劇薬を飲ませるシーンだ。看護師と患者の無言のアイコンタクトがなんとも切なかった。
人権なんてとてもない状況で、人間らしさを忘れまい、と生きる姿に心を打たれた。

終盤のシーン。
シンドラーの手により、アウシュビッツ収容所から助け出される女性たち。
しかしその傍らに、ガス室に送り込まれるユダヤ人の列が映された。
虐殺を免れた約1100人のユダヤ人。
だがその裏でその何千倍ものユダヤ人が命を落としたということが、心に重く響いた。

「殺される理由がないから、安全策もない」
「戦時中でなければ、あいつもただの男だっただろう」
「もう少し努力していれば、まだ救える命があったのに」

劇中の言葉の数々が、数日たった今でも頭から離れてくれない。
特に最後、シンドラーが泣き崩れるシーンは涙なしには見られない。それを支えるシュターン氏も良かった。

600万人ものユダヤ人を虐殺したナチス・ドイツと、1人でも多くの人を助けようとしたシンドラー。
命の数え方をこんなにも変えてしまうのかと、戦争の残酷さを思い知らされた。

後世に残すべき作品。