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恋愛社会学のススメのemilyのレビュー・感想・評価

恋愛社会学のススメ(2009年製作の映画)
3.7
幸せいっぱいのカップル、クリスとギャッティーはバケーションで避暑地にやってくる。しかし彼らより幸せそうなカップルに出会うことで、二人が築き上げてきたお互いの役目や距離感が崩れ始める。

 タイトルコールがレトロポップで70代の色彩に包まれて、そのまま淡い色が全編を引っ張っていく。二人は避暑地でのバケーションにきており、その期間はそこそこ長いものと考えられる。結婚前の男女が疑似夫婦を楽しむ。例えば今までは1泊や2泊のお泊りデートがあったかもしれないが、そのくらいの時間では見えなかった、細かいすれ違いや、価値観の違いが浮き彫りになってくる。「愛してる」言葉を呪文のように唱え、自分の気持ちを確認する。それは自分の気持ちそのもの、二人の関係そのものに微妙な空気が流れ始めているからだ。

 そこに比べる対象となるカップルが交わる。二人だけでも、長い時間を過ごしてずれ始めたものが、先輩のカップルを見ることで、自分たちとの落差を感じる。無意識に男は女をリードしはじめ、それに必死でついていこうとする女は、おかしくなり始める。彼女みたいになればうまくいくのか?二人は別のカップルと比べてしまうことで、自分達の破綻を進行させてしまうのだ。自分たちには自分たちの形があるはずなのに。先輩カップルにはどう転んでもなれないのに。そうして別のところに幸せを求めてしまった二人は、「愛してる」の言葉に頼り、その言葉でなんとかうまくまとめようとする。

 絶妙な心理状態を探り合う二人、くっついたり離れたり、またくっついたり、ゆらゆら揺れ動く心情、妥協してみたり、中和してみたり、でもできなかったり、でもそうやってカップルはお互いを試しあい、確認しあって愛を深めていくのだ。時折エキセントリックな行動が勘に触ったり、観客をびっくりさせたりしながら、普遍的なカップルのすれ違う心情を会話劇と、こまめな表情の変化でしっかり捉える。

 冒頭の一面のじゅうたんの柄に横たわる彼女。憎たらしくて、すれ違いばかりだけど、でもなんとか上手くやっていきたい。呪文のように唱える愛してるも、きっといつか本物になるはず。そう二人が願うなら。周りを見ても、違う人になろうとしても、二人は二人でしかない。二人の愛のカタチ、二人の中和はいろんなことを試しながらきっと見つかるものだ。
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