3104Arata

クローバーフィールド/HAKAISHAの3104Arataのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

【ホームビデオ視点の良さを上手く出した映画】
いくつかのレビューを見てびっくりしました。
私自身はここ最近では結構楽しめた映画だったので、その酷評の多さにびっくり。
おそらく、映画の見方の違いなのかもしれませんね。
私の場合は、最近の洋物映画に対して「アトラクション的な面白さ」を求めてみる。テーマ性とかはどちらかといえば二の次で、まず、提供される2時間の時間で「どれだけ一喜一憂(笑ったり驚いたり)させられるか」を求めて観ます。で、映画を観たあとで、その物語が語りたかったもの(感じさせたかったもの)は何か、について考えをめぐらせる。

その見方においては、この映画は単純に2時間それなりにハラハラドキドキさせられた。特に、怪物から子供たちが生まれて、ミクロ単位で人を襲うあたり。しかも一度襲われた(傷つけられた)キャラクターは、その後に何かしらの問題を持つ(ゾンビになるのか、はたまた毒をまきちらすのか)。その辺は映画ではあまり深く語られず、ただ、カーテン越しに彼女(傷つけられた人物)が医者か何かに治療されずに撃たれるという事実だけが語られていました。

他にも、面白い、と感じた部分はあった。終始、登場人物が持つ手持ちのカメラ視点で描かれているところだ。確かに、手振れがありすぎて見づらい感はありましたが、それでも手持ちカメラであることの良さは二つあると思います。

一つは、物語の視点を極端に限定しても不快感がなく簡単に受け入れられる。世界をおびやかすような怪物映画なら普通、国防総省や軍など大規模な奴等の反応をみせたりするし、だからこそ彼らの視点で怪物の姿かたちや強さを明確にしなければならない(逆に言えば、そうしてくれないと見てるこっちは”わざと”隠されてる感を得て納得できない。例えば、「ミスト」という映画はその辺上手く作っているが、それでも”わざと”らしさを感じたのです)。

もう一つは、もともと録画されていたテープに上書き録画をしている設定だったので、時々カメラを切った時に出てくる過去に録画した映像(主人公とヒロインが愛し合っている姿)から、サブテーマの“愛”を継続的に、しかもスムースに説明してくれるところ。だからこそ、ラストシーンで二人が爆破に巻き込まれて死んだ(?)後に再生された上書き前の動画(=2人が愛を語り合うシーン)を実に“悲しく”感じさせてくれた。
つまり、パニック映画なんだけど恋愛要素がうまく交じり合わせている。よくある、無理くり恋愛を入れたパニック映画、よりは恋愛の部分に多くの時間を割くことなく、しかしながら明確に語られていたと思います。

反面、がっかりもあります。それは、手持ちカメラの視点だからこそ臨場感や自然な語り方を心がけたつもりだろうが、しかし!山場まで“わざと”怪物を隠してる(=見せない)感は否めない。製作者の意図がモロばれ、だった。まあ、その辺のリスクを背負っても山場まで怪物を見せないように徹した方がいいのかもしれないが、どうしてもその辺(製作者の意図)をこちらが感じてしまうと感情移入度が下がる。

もう一つは、“消化不良”ですかね。映画の冒頭で“作戦コードネーム:クローバーフィールド”(←さだかではないが。)みたいなテロップが出てきたから、「きっとラストでは、どこから現れた怪物でどうやって倒したのかが、ビデオを再生している人の視点で語られるんだろな」と思っていたのに、その辺をポイッと捨てて終わった。「え゛~!」です、ほんと。だれが「作戦コードネーム」を決めて、誰が冒頭のビデオを再生したのかが全くわからんのです。謎だ。ただ、この映画は続編がある、という噂を耳にした瞬間にそのマイナスはゼロに復帰。むしろ、期待感というプラスに上昇。

さらなるがっかりは、最近のどんな怪物(例えば宇宙戦争とかサインとかで出てくる奴)を見ても、直感的にしっくり来たものは一つもない、ってこと。今まであったとすれば、エイリアンくらい。なんでか?それはよくわかりません。


総評。主人公とヒロインの恋愛物語には大したテーマも感動もそれほどないが、パニックを楽しみたいのであればそれなりに楽しめる映画、であり、それなりに(10点中5点程度)感動できる映画。

楽しめるポイントは、ホームビデオという媒体を通して物語を語る故に、?臨場感がより伝わった。?限定された視点で物語を語っても違和感が無い。?上書き(本作品)前の録画動画を見せることで簡潔に“愛”を語る。が上手く表現されていると思いました。

しかしながら、ハッピーエンドでないだけに見終わった後に多少暗い気持ちになります。

とりあえず、続編を早く見て“怪物”の出生秘話などを聞きたい。この物語自体は広がりのあるものだと期待しています。
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