真世紀

郡上一揆の真世紀のネタバレレビュー・内容・結末

郡上一揆(2000年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

たまたまポスターを見て、勤め先のある都区内の労組による百姓一揆を扱った映画の上映会へ。会場は八割方埋まっていたが、一般当日券で入った自分の番号は10番。つまりそれ以外の周りは労組関連の人ばかりと画面の内と外が呼応するかのような環境での鑑賞となる。

神山征二郎監督が助監督時代から念願していた企画。郷里の岐阜で宝暦年間に起きた一揆が題材。最近の日本映画では珍しい延べ3500人のエキストラによる群衆シーンが見物といっても描くのは一揆。地味である。こんな題材でよくつくれたと驚く。何しろ一揆。デートムービーであれ、OLが会社帰りに女友達とであれ、まずは選択肢から外れることは間違いない。

悪政に「もう我慢できん」と農民が大暴れするも鎮圧という話かと思いきや、実は四年余りにわたる長期の話でしかも強訴や老中への駕籠訴えと農民側の違法手段での訴えを受けても当時の訴訟制度にきちんとのっとり進む。

江戸では農民の代表らは公事宿に滞在。引き伸ばし策で江戸に留め置かれる。一度は村に帰されるも再度の訴えをしたため、不届きと捕まり、叩きや石を抱かせと責められ、最期には獄門首までと江戸の司法、刑罰史のような展開。

そんな扱いをしておきながらも裁きの結果が案外公平でこれには驚いた。

既婚の役の岩崎ひろみがきちんとお歯黒付けていたりするあたりからして考証もしっかりしています。

訴訟の費用、公事宿の滞在費を後で村々で負担し、集めるといった点も描いていて、江戸に留め置かれた宿代はどうしたのと気になったあなたもこれで大丈夫。

そしてキャストも豪華。主演が緒形直人。その父親に加藤剛。いわずとしれた当たり役は大岡越前ですが、今回は自分が伝馬町牢屋敷につながれる。

他の農民も林隆三、永島敏行、古田新太。公事宿主人に篠田三郎。庄屋に前田吟。元凶の藩主に河原崎建三。一揆という題材と農民をじっくり腰をすえ、描いた異色の時代劇映画。一見の価値あり。
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