うにたべたい

東海道お化け道中のうにたべたいのレビュー・感想・評価

東海道お化け道中(1969年製作の映画)
3.9
"大映の妖怪三部作"3作目。
妖怪たちが主役だった妖怪大戦争から変わって、妖怪百物語のように人側が主役の作品になっています。
妖怪百物語同様、本作の妖怪は悪行を働く人間のお仕置役として登場します。
また、妖怪の個性よりも人間ドラマに比重を置いた展開で、妖怪特撮というよりも妖怪も出てくる時代劇という印象が強かったです。
から傘やろくろ首のようなキャッチーな妖怪は登場しないので、個性的な妖怪たちの活躍を楽しみにする場合、肩透かしを食うかもしれないですが、展開はシンプルで作品として面白かったです。

妖怪を祀った土地の塚守である「甚兵衛」は、ある日ヤクザの刃傷沙汰に巻き込まれて命を落とす。
甚兵衛は死の間際に、幼い孫娘の「美代」に由比宿に行けば父親に会えることを告げ、小袋に入ったサイコロを託す。
美代は1人東海道を下るが、ある書付を拾ったことでヤクザの火車組に追われることになるという展開。
火車組と美代、そして旅先で美代が出会う人々の物語で、それぞれキャラクターが個性的で楽しかったです。
美代を追いかける火車組の2人組、渡世人の百太郎、ヤクザに雇われた用心棒、唆されて美代を追うことになった賽吉などなど、それぞれにそれぞれの思いがあり動き回り、そこに塚を荒らされて怒り狂った妖怪たちが混ざってどんちゃん騒ぎになる、非常に楽しい作品でした。

ラストも良かったです。
意外な父親の正体と、サイコロの秘密が判明した時はしびれました。
キャラクターの動かし方も含め、シナリオはよく練られていると思いました。
それにしても妖怪大戦争で大ヒットしたはずなのに、路線を妖怪百物語側へ戻すなんて、思い切ったことのような気がしますね。
どちらも良いですが、作品としては、妖怪大戦争より本作の方が好みです。